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国語の合否を分けた一題

桜蔭中入試対策・国語の合否を分けた一題(2019年度)

難易度分類

問一 すべてA 問二 AB 問三 B 問四 B 問五 B
問一 全てA 問二C 問三 B 問四 B 問五 B 問六 B

A…確実に得点したい問題
B…知識や文脈力、論理的思考力で、得点に大きく差がつく問題
C…国語力がないと歯が立たない問題

問題総評

今年度の桜蔭中学は論説文と物語文の二つの構成となっており、例年通りです。大問一は、人間が自分だけの時間を大切にする生活をすることになったために、孤独に、不幸になっている現代の問題点を取り上げた文章です。大問二は、自分は死ぬべき存在だと悩んでいた、不時着した特攻隊の操縦士と、不時着した沖永良部島の住民との関わり合いがえがかれた物語です。方言で書かれているので、読むのに苦労した受験生がいたかもしれません。しかしどちらも桜蔭中学の対策を続けてきた受験生にとっては決して取り組みにくい問題ではなかったとは思いますが、どこまで書けばよいかの判断がつきにくいものだと感じました。

問題別寸評

問一 漢字の書き取り問題

5つとも落とせません。

問二 四字熟語の空欄補充問題

喜怒哀楽。落としてはいけない問題です。

問三 線部の言い換え問題 

線部の直前直後に触れて書けば得点になります。あとは「時間は自分だけでは使えない」について説明している本文の終盤、「人間はひとりで時間を使うようにできていない」という表現以降の内容を加えます。

問四 指示語と線部の言い換え問題 

合否を分けた一題で解説します。

問五 理由説明問題 

線部の直後「それは、そもそも人間がひとりで時間を使うようにできていないから」ではじまる内容をまとめる問題です。本来人間は、社会的な時間概念で生きてきたのに、今は経済的な時間概念によって生きているから、という内容を中心に、「どのような」などの要素を付け加えて書くことで答えとなります。この部分の正確さが点数の差になります。

問一 副詞の空欄補充問題 ※選択肢

空欄の前後の読み取りと選択肢の比較をすれば正解が選べる問題です。

問二 心情説明問題

線部の動作がどういう心情を表すものであり、そしてそれはどういう出来事をきっかけに起こったものなのか。【出来事+心情】という記述の土台をまず考えます。その次に、線部の直前の出来事が起こったのは、どういう背景があってのことなのかを加えます。さらに、出来事を心情に結び付ける内容も加えます。字数指定のない、長文記述が特徴の桜蔭の典型的問題です。今回は答えを書くうえでのポイントである、特攻で死んだイチみーはじゃーじゃの孫であることが注に書かれていたということもあり、難しい記述だったと言えます。

問三 状況把握問題

「あんな戦闘機を特攻に使う」という表現から、物資不足という状況、そしてそれは、戦争という場での不利な状況を示しています。歴史の知識も必要ですが、書きにくい問題ではなかったと思います。

問四 心情変化問題

心情変化の記述では【前の心情→きっかけとなる出来事→後の心情】という土台になる書き方があります。今回もまずこれにあてはめます。③では、「~しまった」という表現から、「罪悪感」「自責の念」が読み取れます。なぜそのような気持ちになったのかという理由も書きます。次に④では、「よかった」という表現から、「安心」「喜び」が読み取れます。このような心情に変化したのは、主人公たちの「ここにいれば」という言葉を聞いたからです。自分は特攻で死ななくてはいけないと思っていたのに、生きていても良いと思うことができるようになって、罪悪感から解放されて心の底から安心できたのです。公式通りに書いて大きく点数を稼いでほしい問題でした。

問五 空欄補充問題 ※抜き出し

「(   )じゃなかった」という表現から、以前は、というよりも直前まで伍長は何だったのかを考えます。問四でも見たとおり、伍長は特攻で死ねなかった自分を責めています。特攻で死ぬということが何になることだったのかを探す問題でした。どのあたりに書かれた内容か想定し、短時間で見つけなくてはいけない問題でした。

問六 心情変化問題

「人形」がどういう意味を持ったものなのかは、線部の直前の女学生の話から分かります。伍長は「死ねという呪い」だと言っています。それを聞いて戸惑うカミでしたが、伍長との別れに際しては、手を降ることをしませんでした。「人形」を送ることが、いかに特攻隊の兵士を苦しめたかということを理解したのです。カミがこのような理解へ至った心情変化を、【前の心情→きっかけとなる出来事→後の心情】という土台の書き方にあてはめて書きます。この土台の書き方までは標準レベルです。あとは精度で差がつくのでしょう。

合否を分けた一題

今回は大問一の問四を取り上げます。二つ問われていることがある、―線②に連続する形で―線③が来ている、線部で考慮に入れるべき言葉がある、というふうに、一筋縄ではいかない問題でした。そのポイントを示していきたいと思います。

問四 指示語と線部の言い換え問題

―線部②について、「それ」とはどういうことかを明らかにして、―線部②全体の言っていることを説明しなさい。

解き方の手順

第一に「それ」という指示語の内容を明らかにします。指示語の問題は直後にヒントがあるので、直後を読みますと、「それは…同じ考え方」となっています。ということは、「それ」が指す内容は、「考え方」であると分かります。「考え方」という言葉をヒントに直前を見てみますと、―線②と同じ行と、2行前に「考える。」という述語があります。このうち抽象的な表現になっているのは2行前の方です。「自分の欲求を最大限満たすために、効率的な過ごし方を考える。」、この部分が「それ」の指す内容で良いのですが、何の効率的な過ごし方かが書いていません。直前の一文の「自分だけの時間」がそれに当たるので足します。

「『それ』とは、自分だけの時間を、自分の欲求を最大限満たすために効率化を図って消費しようとこと」

第二に「自分が節約した時間の考え方」を言い換えます。「節約」という言葉をヒント探すと、―線②4行前に「物資の流通や、情報技術の高度化を通じて時間を節約した結果」とあるのでここを使います。もしくはその直前の内容「日本人は、他人に邪魔されずに自分だけで使える時間をひたすら追い求めた。そこで、効率化や経済化の観点から定義する必要性が生じた。つまり、時間はコストであり、金に換算できるという考え方」という部分でもよいでしょう。これと第一で見た「それ」の指す内容が同じである、というのもが答えの土台になります。

「物資の豊かさや情報技術の高さに依存して自分だけの時間を確保するという考え方は、同じであること。」

ここで注意点が2つあります。

1つは、問いはあくまで―線部②について問うているので、直後の―線部③の内容を書いてしまうと、適切な解答ではなくなります。問いで聞かれていない余計な要素を入れないように気をつけましょう。

もう1つは、「同じ」という問題の時には、二つの共通点、つまり、どのようなところが同じなのか、を書かなければなりません。
今回の問いでは、つい最近まで日本人にはあった「常にだれかと分かち合う時間」、「共に生きている仲間の時間」、「他者とつながっている人間の時間」が失われたということです。

これら3つの要素を足したものが解答となります。

【解答例】
「それ」とは、自分の時間を、自分の欲求を最大限満たすために効率化を図って消費しようとすることであり、そのことと、物資の豊かさや情報技術の高さに依存して自分だけの時間を確保するという考え方は、どちらも他者とのつながりを欠いている点で同じであるということ。

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