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国語の合否を分けた一題

世田谷学園中学入試対策・国語の合否を分けた一題(2019年度)

難易度分類

問一 A 問二 A 問三 A 問四 B 問五A 問六B
問七 A 問八 B 問九 B 問十B 問十一(1)B (2)B
問十二 B 問十三 B 問十四 B 問十五 C 
問十六 B 問十七 B 問十八 B

A…世田谷学園中合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識や文脈力、論理的思考力で、得点に大きく差がつく問題
C…国語力がないと歯が立たない問題

総評

今年度は国語の出題形式に大きな変革があった年でした。例年、大問一が文学的文章、大問二が論説的文章、大問三が漢字という出題形式でした。しかし、今年度の1次試験では、大問は論説的文章の1題のみで、文学的文章の出題はありませんでした。大問が一題になりましたが、本文の文字数や合計の設問数は例年とそれほど変化がなく、一問あたりにかけることのできる時間は例年とほぼ同じでした。小学生にはなじみの薄い、資本主義について書かれた論説文を読み通し、要旨を的確につかむ力が求められました。また、これまでの世田谷学園の国語の入試では、設問の内容はオーソドックスなものがほとんどでした。ところが、今年度はリード文に従って計算を行い、その答えを空欄に入れて文章を完成させる問題など、目新しいものが出題されています。来年度以降の入試では、見たことのないパターンの問題が出題されたとしても動揺せずに、落ち着いて設問の指示を読み取る力が必要になってくると思われます。

問題別寸評

渡邉格『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』より

問一

漢字の問題です。「理知」的や「徒弟」制度の2問は言葉の知識がなければ答えることが難しい問題でした。

問二

本文の空欄に動詞を入れて慣用句を作る問題です。候補となる動詞が提示されているので難易度はそれほど高くありませんでしたが、「技術習得費が『浮い』た」、「牛丼は200円を『切る』」といったお金に関連する慣用句は答えにくかったかもしれません。

問三

aからeにあてはまる接続語を選ぶ問題です。空欄の前後の内容を読み取れば難しくない問題なので、全問正解したいところです。

問四

ことばの意味を選ぶ問題です。知らない言葉が出てきたときは、傍線部の前後の文脈を読み取って、選んだことばに言い換えて読んでみることが大切です。

問五

どちらの性質にあてはまるのかを2択で選ぶ問題です。イースト菌と天然酵母の違いはTさんと筆者の会話の中でたとえを使って分かりやすく解説されており、取り組みやすい問題です。傍線部②の後からⒶの部分までのTさんの発言に注目しましょう。

問六

言い換えを探して抜き出す問題です。傍線部にある「製パンに適した酵母」「工業的に純粋培養した」という言葉の言い換えを、この場の説明役であるTさんの発言から探していきます。傍線部③の3つ前の会話文に「製パンに向いた酵母」「人工的に増やしたもの」とあるので、この2つを含んだ部分が正解となります。

問七

傍線部の身体表現をヒントに人物像を考える問題です。Tさんは「作業の手を止めることなく」「顔だけをこちらに向けて」話しているということから、手元を見なくても作業ができる熟練ぶりと、相手の顔を見て答えようとする真面目さがうかがえます。

問八

傍線部の発言から筆者の考え方を選ぶ問題です。設問に「そんなに」という指示語があるので、まずは指示語の内容を明らかにしてから問題に答えましょう。傍線部③の直前のTさんの「働き者だけを選抜して、そいつだけを増やしていく」という発言が答えのヒントになります。パン作りにとって「悪いことには思えない」のは「選抜」しているからなのか、「能率」が良いからなのかを考えれば答えは明らかです。

問九

傍線部の内容に当てはまらないものを選ぶ問題です。傍線部の直後に「徒弟制度が崩壊」「資本家(経営者)と労働者という資本主義的な雇用関係がパン屋に広がっていった」とあり、これがア「職人的なつながりがなくなった」オ「雇う人と雇われる人とに分けられ」たこととそれぞれ合致します。選択肢オの「パンの生産に関わる人の数が次第に増えていった」ことは直接本文にありませんが、傍線部の2つ前の段落の「親方から技術を認められた職人だけが」「店をもつことができた」という部分から、以前は少数の人間しかパン作りに関わっていなかったことが分かり、以後はパン作りに関わる人数が増えたことが導けます。また、傍線部直前の「誰でも簡単にパンが作れるようになった」と書いてある部分はイと合致します。残った選択肢が「適当ではない」ものになります。

問十

(1)傍線部の理由を選ぶ問題です。傍線部の「パン屋で修行していた僕」は、直前の段落で説明されている「労働者」の具体例であることが分かります。僕=労働者なので、労働者の仕事の過酷さについて説明してある選択肢を探します。パン屋=資本家についての選択肢を除くと、残りはアとオです。アの「以前と変わらない技術を使って」という部分が本文の内容と違うので、答えはオとなります。
(2)傍線部での筆者の心情を選ぶ問題です。傍線部に「僕の仕事の過酷さは、なぜマルクスが生きた150年前と変わらないのか?」とあるので、過酷な労働環境への不満が書いてある選択肢を選びます。そうするとア、ウ、エが残ります。筆者はマルクスの分析を理解しており、その理論が現在の労働環境にあてはまることに「驚き」は感じていないので、驚きがある選択肢は除きます。「気が滅入っている」は、いやなことがあって元気がなくなるという意味ですから、問題解決のために現状を分析している筆者の姿勢とは合致しません。残った選択肢が正解です。

問十一(1)

具体的に示された数値データを使って計算をし、空欄に数字を入れる問題です。計算処理が求められる国語の問題は近年増加傾向にあります。算数の問題としてのレベルは高くないので、設問を読んで落ち着いて答えていきましょう。まず、「交換価値「(給料)が1日あたりA円とあるので、給料の意味を考えます。給料とは労働に対して支払われる費用ですので、労働力6000円がAにあたります。Bのパン1個の値段はⅠの「パンの売り上げ」のデータを見れば分かります。CやAに使われている「交換価値」はなじみのない言葉ですが、「そのとき」生み出したと設問にあるので、直前にある「1時間の労働でパン10個をつくれる」ときに生み出した価値=金額を答えればよいのだと分かります。したがって、100円×10個=1000円が正解です。「1時間の労働でパン10個つくれる」ときのDの労働時間は、パンを80個つくっているので、80÷10=8時間となります。給料分の元を取るために必要な労働時間は6000÷1000=6時間ですので、Eは8-6=2時間となります。労働価値は1時間あたり1000円なので、この差によって生じる儲けFは1000円×2時間=2000円となります(FはデータⅠにある売り上げ8000円-費用6000円=利潤2000円という式からも答えが導けます)。

問十一(2)

合否を分けた一題で解説します。

問十二

傍線部の理由を答える問題です。資本家が「最後に笑う」という比喩表現の意味を考えます。傍線部⑥の前の部分や問十一の内容から、筆者は「利潤」(もうけ)を話題にしているのだと分かります。もうけの配分について、資本家が笑うわけですから、資本家が得をして、労働者が得をしない内容の選択肢を選びます。そうするとアとイが残ります。傍線部⑥の段落には、最初に商品の価格が安くなって、その後にお金がどう動くかが述べられています。商品の値段が下がることが先にある選択肢を選びましょう。

問十三

傍線部を具体的に説明している部分を本文から抜き出す問題です。「替えがきく」とあるので、何が交換可能であるかを考えます。すると、傍線部⑧の次の段落に『パン職人という名の「付属物」は、いくらでも替えがきく』とあります。この部分から、交換可能な存在になったのはパン職人であることが分かりますが、「具体的」という設問の条件に合っていないので、パン職人をどうするのか詳しく書いてある部分を探します。直後の「資本家は~」の次の部分が正解になります。

問十四

傍線部の比喩表現を具体化したものを選ぶ問題です。「人間が機械に追い回されるようになる」というのは、機械を使うことによるマイナス面を指し示しています。機械のプラス面を書いてある選択肢2つと、機械以外のことが書いてある選択肢2つを除いて答えましょう。

問十五

傍線部の結果を書く記述問題です。設問の指示通りに一つずつ答えていきましょう。まず、❶「パン職人における労働の単純化」の事例を具体的に書いてある部分を探します。次に、「パン職人がどのような存在に変わっ」たかを書くために、❷パン職人が以前はどのような存在であったか、❸パン職人が労働の単純化によってどんな存在へと変わったのかを考えます。以上3点を書いていきます。❶は【e】の後ろにある「イーストを使えばだれでも簡単にパンを発酵させられるようになる」「うっかり腐らせるようなことがなくなる」という部分を要約しましょう。❷については傍線部④のある段落の「パンづくりから技術や熟練が不要になり」という部分を参考に、パン職人は技術者であり、熟練者であったことを書きましょう。❸については、傍線部⑦の『単純な労働は「誰でもできる」仕事になって、いくらでも替えがきくようになる』というところを要約しましょう。全てをまとめると、「だれでも簡単にパンを腐らせずに発酵させられるイーストによって」「技術が不要になり、パン職人は熟練者から」「誰でもできる仕事をする単純労働者でいくらでも替えがきく存在に変わった」となります。

問十六

傍線部の中の言葉と結びつくものを選ぶ問題です。傍線部に「安くなっている」とありますので、『食』が安くなる原因を探します。すると、傍線部の直後に『「職」(労働力)を安くするために「食」(商品)を安くする』とありますので、食の安さと結びつくのは労働力の安さ=労働の価格であることが分かります。

問十七

空欄のある文章を完成させる問題です。設問に、『「A」可能性を含むパンは天然酵母を使用』しており『職人の高い「B」がなければ商品にはならない』という文があり、これと対比させた文が『「腐らない」パンは「C」を使用した誰にでもつくることができるもの』です。「A」の逆が「腐らない」、「天然酵母」の逆が「C」ですのでAは「腐る」、Cは「イースト」です。「B」はパンを誰でもつくれることの逆ですから、Ⓑの段落にある『パンづくりの「技術」』となります。同様に、設問の文章に「D」は資本主義において代替可能なものであり、「D」を単純化された労働から解放すべきとあるので、単純化された労働をする人々=労働者がDの答えとなります。

問十八

本文の要旨を一つだけ選ぶ問題です。「チャップリンの映画によって」や「イーストと」「天然酵母の配合を考える」など、本筋とは関係ない選択肢をまず除きましょう。次に、「食品が安くなることによって」「労働者をめぐる問題も少しずつ解決される」という本文の内容と逆の選択肢も除きます。残った選択肢で、現状を打開する方法を具体的に考えているのはマルクスか筆者のどちらであるかを考えます。マルクスは資本主義の仕組みを分析しているだけで、問題解決のための具体的な取り組みを本文の最後の部分で述べているのは筆者です。

合否を分けた1題

問十一(2)

データを比べて説明する問題です。国語の問題ですが、数字を使って説明しなければいけないので、書き方に戸惑った受験生も多かったことでしょう。しかし、設問の指示をヒントにしながら一つ一つ書くことを決めていけば、決して難しい問題ではありません。諦めた受験生としっかり取り組んだ受験生の間で差がついた問題だと考え、合否を分けた一題として取り上げることにしました。

考え方
設問の指示に『「技術革新」と利潤の関係について』とあるので、まずは本文のどこにこの関係が述べられているかを探します。傍線部Yのある段落がこれにあたります。設問に「数値を具体的に挙げながら」という条件が付いているので、○○円だった利潤が〇〇円となり○○倍になったなどの数字を入れることを忘れないようにしましょう。

「技術革新」と利潤の関係(本文より抜粋)
技術革新で生産性が向上すると、労働時間を延ばすことなく、資本家(経営者)は多くの「利潤」を手にすることができる。

この文章に数字を入れて説明していけば正解が導き出せます。最初に技術革新で生産性が向上したところがⅠとⅡのデータのどの部分かを探します。どちらも労働力は同じ6000円です。パン1個あたりの値段も同じです。違うのはパンを売り上げた個数です。Ⅰの80個に対し、Ⅱは160個です。「ⅠもⅡも労働時間は同じものとして考えること」と設問にあるので、売り上げた個数の差は技術革新によるものと考えられます。技術革新による生産性の向上を数字を入れながら説明すると、以下のようになります。

技術革新について
技術革新により、同じ労働時間で、Ⅰで80個だったパンの売り上げはⅡで160個となり2倍になっている。これは生産性が向上したと言える。

次に利潤について数字を挙げて説明します。

利潤について
Ⅰで2000円だった利潤はⅡで1万円となり5倍になっている。利潤の差額の8000円は資本家のものになる。

そのまま上記の2つを繋げると以下のようになります。

技術革新により、同じ労働時間で、Ⅰで80個だったパンの売り上げはⅡで160個となり2倍になっている。これは生産性が向上したと言える。Ⅰで2000円だった利潤はⅡで1万円となり5倍になっている。利潤の差額の8000円は資本家のものになる。

このままでも解答としては十分ですが、読みやすいように最後にまとめを入れて書くと、以下のようになります。

技術革新による生産性の向上により、同じ労働時間で、Ⅰで80個だったパンの売り上げはⅡで160個となり2倍になっている。その結果、Ⅰで2000円だった利潤はⅡで1万円となり5倍になっている。利潤の差額は8000円である。技術革新で増加したこの利潤は、労働者のもとへはいかず、資本家のものになる。
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