一 | 問一A 問二B 問三B 問四A 問五A 問六C問七A 問八A 問九B 問十C 問十一A |
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二 | 問一A 問二B 問三A 問四A 問五A 問六A問七B 問八A |
三 | A |
A…普通部合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識や文脈力、論理的思考力で、得点に大きく差がつく問題
C…国語力がないと歯が立たない問題
前年同様、大問は三問でした。大問一は物語文で、高度経済成長期に家にテレビが来た少年と友人の話でした。大問二は短歌についての鑑賞文で、現代人と昔の人との感覚の違いについて論じたものでした。教養が必要とされる慶應系らしい問題でした。大問三は漢字の書き取りが十問でした。問題形式としては、例年通り、抜き出し問題が7問と他校に比べて圧倒的に多く出題されました。選択肢問題は9問、記述問題は2問と問題数は少なめです。記述問題は対照的な内容を書く問題が1題、視点人物以外の人物の様子と気持ちを書く問題が1題でした。字数も25字以内・30字以内と少なめです。素材文も長いものではなく問題数も記述の字数も少なめですが、難度が高い抜き出し問題に引っかかってしまい時間切れになった受験生も多数いたことと思われます。抜き出し問題はまずは内容を予想して傍線部の前後から次第に範囲を広げながら探していき、分からないところは時間をかけずに飛ばして後からやることが大切です。40分という制限時間をうまく使うトレーニングが必要です。
朝倉かすみ『ぼくは朝日』より
傍線部と対照させた文を書く記述問題です。傍線部では「カラーテレビ」と「ねずみ色」について書いてあるので、記述では「白黒テレビ」と「ねずみ色」について書くことになります。カラーテレビでは「ねずみ色は単にねずみ色になった」のですから、白黒テレビではねずみ色は単なるねずみ色ではなく、どのようなものであったのか、ということを本文から探して書きましょう。
傍線部を詳しく説明した文を選ぶ問題です。傍線部の後に(カラーテレビの色は)「折紙よりも強く主張していた」とあるので、はっきり・くっきりした色であることが分かります。候補になった選択肢の中で、本文と関係ない「直線的」という言葉が入ったものを除けば正解が導けます。
傍線部のように行動した主人公の心情の裏付けとなる表現を抜き出す問題です。朝日が富樫くんに話しかけたときの心情を、二人が会話しているシーンから探してみます。誰でもいいから話してみたかった、という心情を考えて、つい話しかけてしまった、うっかりと話しかけてしまった、何の気なしに話しかけてしまった、という表現を探しましょう。
傍線部の主人公の行動の理由としてあてはまらないものを選ぶ問題です。昨日の朝日が「家で」言いそこねた理由としてあてはまらないものを選びます。選択肢中に、今日の学校で朝日が考えたことがあるので、それが正解です。
傍線部の発言をした主人公の心情を選ぶ問題です。富樫くんにカラーテレビのことを話したあと、「アリマさんに安くしてもらったとか言ってたし」の直後の部分に朝日が考えていたことがあるので、そこを参考にすれば正解が導けます。
傍線部までの主人公の気持ちの変化が書いてある箇所を抜き出す問題です。傍線部では富樫君を家に招く決心をしていますが、それまでは迷っています。迷っている理由を箇条書きで書いている箇所から、決心する動作をする直前までが答えになります。
傍線部を説明している選択肢を選ぶ問題です。まずは何が「全然間に合わない音」なのかを考えましょう。傍線部の前にある「朝日がたて笛で吹いていた音」が、浜田さんのおばあさんが救急車に運ばれていくという状況に対して「間に合わない」ということですから、正解は明らかです。
傍線部の主人公の考えの理由を選ぶ問題です。富樫くんが「ダッシュでくる」ということは、あわててくる、喜び勇んでくると朝日が予想していたということです。二人の話題になっていたカラーテレビのことが書いてある選択肢が正解です。
合否を分けた一題で解説します。
傍線部以降から、主人公の様子を表す部分を抜き出す問題です。「テレビにくぎづけになっている」ということは、テレビに夢中になっているということです。九字という字数制限がなければいくらでも該当する部分がありますが、九字でちょうど切れる部分は正解のみです。テレビから目を離すことができず、テレビ以外の他の物を見るべき場面で見ていない部分を探しましょう。
傍線部での心情を答える問題です。傍線部以前に主人公がテレビに夢中になっている様子が長々と描写されているので、そこが答えになります。
最果タヒ『百人一首という感情』より
漢字の読みの問題です。
空欄にあてはまる言葉を抜き出す問題です。空欄のある段落から二字の言葉、三字の言葉をそれぞれ探します。本文にある「」の中の短歌の解説を読むと、A・Bともに「かささぎの橋」の言い換えであることが分かります。Bは「頭上に広がる」がヒントになるので簡単です。Aは「目の前に見えた」「かささぎの橋」とは何のことを指しているか、本文から探しましょう。
傍線部の本文中の説明を選ぶ問題です。「自分たち」というのが「当時の人」であることはすぐに分かります。彼らが知らなかったことから予想してみると、傍線部4の数行後にある「あの空の川のあたりにも、同じような秋が来て、同じような、夜が来ていると」当時の人たちが考えていたということです。この表現に近い選択肢を選びます。
傍線部にあてはまらない表現を選ぶ問題です。「知識としては知っているけれど、本当に起こっていることだと実感がない」というのが傍線部の表現です。傍線部にあてはまらないのは、「知識としては知っているけれど、実際に見てみると、感情のゆれ方が違う」という表現がある選択肢です。
修飾語の係り受けの問題です。修飾語と係る言葉を連続して読んで、しっくりくるものを選びましょう。
傍線部を別の表現で正確に言い換えている文を選ぶ問題です。今では「伝説」「非現実的」と思われていることを当時の人は「当たり前」に思っていたかもしれない、ということが傍線部の前の部分に書かれています。「伝説」「非現実的」=「ファンタジー」、「当たり前」=「リアル」という意味を知っていれば正解が導けます。
傍線部の理由となる部分を抜き出す問題です。「今の私たちにはないものの感じ方」を探すわけですから、「当時の人」の考え方を探します。昔の人について述べている部分から、「感じ方」に近い単語を探しましょう。
指示語の内容を抜き出す問題です。「当時の人」が「信じきることができた」ものは何かを考えます。傍線部の直前にある「霜の気配」がヒントです。「霜」が使われている十四字の表現を傍線部の直前の部分から探せば簡単に正解が出ます。
漢字の書き取りです。難易度は低いので全問正解を狙いたいところです。景勝地とは景色のよいところ、という意味です。
傍線部の動作から心情を推し量って記述する問題です。全く見当がつかないことはないと思いますが、要素を不足なく記述することは難しいと思い、合否を分けた一題として取り上げることにしました。
考え方
傍線部の表現それぞれに対応する気持ちを考えます。
上の①の部分から、富樫くんのカラーテレビに対する興味が分かります。また、テレビに目を向けたまま②の部分にある「おそるおそる腰を下ろす」という不自然な動作から、緊張していることが読み取れます。緊張しているのは、富樫君は朝日にとって「誰でもよかった」存在であること、つまり二人がそれほど親しくないことが理由だと推測できます。これら全てをまとめて記述します。