長きにわたって東京大学合格者数1位を誇る開成学園、もちろん中学受験の算数においても最高峰の出題レベルを誇ります。
注意したいのは最高峰の「算数」であるという点です。大人の視点で算数を初歩の数学だと見くびっていると確実に足元をすくわれます。開成中学の算数の出題において、方程式や様々な定理は、ほとんど役に立ちません。数学にとらわれない斬新な発想力が求められているのです。学習内容を先取りして、数学の知識があっても太刀打ちできません、むしろ柔軟な発想という点では、知識が足枷になることも多いのです。
私自身の実体験として、正確な知識の積み重ねと使い方が問われる東大入試の数学と比べても、発想力と作業力が問われる開成中学の算数において、安定して高得点を取ることは難しいと言えます。
また開成中学の入学試験は、最高峰を目指す生徒同士がしのぎを削る戦いなので、難問でありながら高得点勝負になってくることも特徴としてあげられます。算数を絶対の武器としてきた猛者達の争いなので、ミスが許されない厳しい出題となっています。
毎年のように出題傾向が変わることも注目したいところです。最高難度だった平成13年から数年後の平成17・18年は8割前後が合格点となる高得点勝負になりました。また平成22年は例年4つの大問が3つに減り、我々を驚かせてくれました。平成23年は大問は4つに戻ったものの、8割5分という高い合格者平均点に表れているように、非常に易しい出題でした。この出題傾向の変化にも、試験会場で柔軟に対応していく必要があるのです。
近年の出題において、最も開成中学らしい問題と言えます。一読しても、問題の本質が見えてきません。ただ、条件に即して書きだしていくことで、問題の本質を見抜くことができるという点は、筑波大学附属駒場中をはじめとする他の最難関男子校の発想にも通じる問題です。問題の条件を正しく読み取る力と、緻密な作業力が問われています。
例 H23 3 H19 2 H18 1
数学とは異なる、算数の原点とも言える出題です。普段何気なく用いている数の特徴や意味、理由を、きちんと式を立てて考えさせます。整数や分数の本質的な意味の理解が問われます。
例 H21 4 H16 1 H12 3
開成中学の算数においては、比較的取り組みやすい分野ですが、年度によって難易度にバラつきがあります。逆比や線分図、ダイヤグラム、シャドウ等、受験算数における様々な知識の定着度を見る出題と言えるでしょう。
例
易 H18 2 H17 4
難 H22 3
かつては発想力勝負の難問が目立っていましたが、ここ数年は相似に着目した典型問題の組合せが続いています。開成中学の合格を目指すならば絶対に苦手にしてはならない分野です。
例
易 H23 4 H21 1 H20 2 H18 3
難 H19 5 H15 1 H13 1 H13 3
筑波大学附属駒場中や麻布中、桜蔭中など、他の最難関校と比べ、考え方を書く欄は大きく、自らの考えを十分に表現することが可能です。
解答用紙にも「(注意)式や図や計算などは、他の場所や裏面などに書かないで、すべて解答用紙のその問題の場所にかきなさい」と明記されていることからも、開成中学は、論理性・数学的思考力を求めていると言えるでしょう。
ただ解答欄の大きさに比例してか、開成中学が求める内容も多く、分量的にも時間的にも、冗長な答案を書いている余裕はありません。何が必要で何が不要なのか、開成中学を志望する生徒を数多く指導してきた講師のアドバイスに基づいた答案作成の練習は必須です。
大問1つあたり20分弱をかけることができるものの、問題の難易度や調べ上げる手間、記述の分量を考えると、決して余裕がある設定とはいえません。適切な時間配分を行うためにも、事前と試験開始時に明確な作戦を立てることが必須になってきます。