A…渋谷教育渋谷中合格を目指すなら、確実に得点したい問題。標準的な知識問題など
B…やや難度が高く、論理的思考力で文脈をとらえることが求められる問題
C…かなり難度が高く、失点しても致命的ではないが、正解すると得点差がつく問題
一 | 問一 A 問二 C 問三 B 問四 B 問五 B 問六 B 問七 C |
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二 | 問一 A 問二 B 問三 B 問四 A 問五 B 問六 B 問七 A |
物語文で出典は今村夏子の「こちらあみ子」でした。小学1年生の「あみ子」の母は自宅で書道教室を開いていましたが、そこで偶然見かけた「のり君」(あとで同じクラスだったことも分かります)に恋をするという内容です。大まかな内容はつかみやすいのですが、あみ子の心情を比喩など間接表現が用いられているため、細部まで正確に読み取れるかどうかで得点差がつく問題と言えましょう。
「方便」「往復」など中学受験でも頻出漢字の書き取りです。ここは確実に点数をとりたいところです。
例年、渋谷教育渋谷は記号選択問題と記述問題がバランスよく出題されますが、記号選択問題は5択でそれぞれの選択肢が長く、しかも、ひっかけが多いため、ていねいに選ばないと失点してしまいます。記号選択問題は必ず一文全体で見るのではなく、パーツに分けて部分的チェックを行いましょう。この問題は「傍線部を含む段落の精読」が正解の鍵となります。男の子(のり君)が半紙に書いた文字を目の前で掲げている様子に、あみ子は見入ってしまい、他のことが考えられなくなったという点を押さえましょう。
設問文に「ここに至るまでの二人(あみ子と母)のやりとり」とありますから、まずは傍線部までの経緯を確認します(あみ子と母のセリフ)。さらに、傍線部「あみ子の前でピシリと閉じた」という母の行動が表すことを考えましょう。
「どういうことですか」と問われていますので、傍線部の分かりにくい語句を言い換えましょう。「それ」という指示語が指す内容と「熱視線」を具体的に説明すればよいのです。「それ」は「のり君が母に向って習字の完成品を見せたこと」であり、「熱視線」は「あみ子への関心」です。
傍線部の前を確認しましょう。「のり君なら、初めから、ずっといたよと教えてくれた。知らなかった」とあり、あみ子の驚きを表していると考えられます。
50字の記述問題です。後ほど「合否を分けた一題」で解説します。
文章の表現に関する問題です。こういうタイプの問題は、あまり正答率が高くないことが多いのですが、明らかに間違っている内容を含むものから消去していくようにすると良いでしょう。「本文の事実と異なるもの」や「テーマのずれ」、「本文から読み取れないもの」を除外していけば正解できます。この物語文はあみ子の心情を中心に、比喩表現を交えて描かれているという点をおさえたいところです。
論説文で出典は片田珠美の「一億総ガキ社会『成熟拒否』という病」です。渋谷教育渋谷の論説文は大人向けの難解なものが出題されることが多く、また、抽象的な内容が好まれるため、読みづらいと思う受験生もいるでしょう。まずは、話題の中心は何かをとらえましょう。今回の論説文は「前時代の社会規範から解放された現代人は、かえって精神的に不安定となり、自己責任の重圧に耐えかねて、他責的な(=他者に責任を転嫁する)人が増えてきている」という内容です。
一と同様、「統合」「余地」「容易」など、中学受験の頻出漢字ので、失点は避けたいところです。
傍線部の前の内容を受けています。ここでいう「禁止すること」とは「個人が強制的に組み込まれてきた家族、学校、会社、あるいは社会の掟」を指しています。そういった考え方が「禁じられた(=否定された)」のです。
傍線部の理由説明型記述です。傍線部の直後に「というのも…からである」と、「理由」を表すヒントワードが書かれていることに着目できれば、さほど難しい問題ではありません。
「傍線部~とはどういうことですか」と問うていますので、傍線部を言い換えた内容を選びましょう。「自己愛的な万能感」は、傍線部の前に書かれているように、「すべて可能だ」と考えることで、「肥大する(=太って大きくなる)」とは、ここでは「思いすぎてしまう」という意味です。
傍線部の言葉を40字以内で具体的に説明する問題です。「他責」とは文字通り「他人を責める」ということですが、なぜそのような行動をしてしまうのかを考え、「因果関係」の型でまとめましょう。「自分は万能であると思い込む(万能感)」「自己責任を背負いきれない」「責任転嫁」という文中の言葉に着目しましょう。
本文で説明されている内容をもとにして、本文には書かれていない具体例と結びつける問題です。最近、難関校ではよく出題されるパターンです。具体例の選択肢を一般化(広く当てはまる形にすること)できるかがポイントです。
「見出し」を選ぶ問題です。論説文を読む際には、話題のかたまりを意識して読み進めましょう。見出しとなるのは、段落中で繰り返されるキーワードであることが多いことも意識しましょう。
「合否を分けた一題」として、一の問六を解説しましょう。
傍線部のような「感覚」になったのは、傍線部直前に書かれているように、「話しかけられた」からです。これに少し肉付けしたり、傍線部を分かりやすく言い換えてみましょう。
「だれに話しかけられた?」→のり君に話しかけられた
「傍線部中の『抑えられない興奮』とは?」→うれしい
ここまでで、とりあえず解答を作ると以下のようになります。
「のり君に話しかけられてうれしかったから。」
これだと「20字」です。設問の条件は「41字以上50字以内」ですから、まだ説明が足りないということです(出題者は初めに模範解答を作り、そのあとで文字数の条件を設定していると考えましょう)。「のり君」はあみ子にとってどのような存在だったかが分かるように肉付けします。
「赤い部屋で見かけた」
「好意を寄せていた」
「初めて(話しかけられた)」
以上の解答要素を追加します。そうすると以下のようになります。
(解答例)「赤い部屋」で偶然見かけて以来、好意を寄せていたのり君に初めて話しかけられ、とてもうれしかったから。