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国語の合否を分けた一題

世田谷学園中学入試対策・国語の合否を分けた一題(2020年度)

難易度分類

問一 B 問二 B 問三 A 問四 A 問五 C 問六 A
問七 B 問八 B 問九 B 問十 B 問十一 C
問十二(1)A (2)C 問十三 B 問十四(1)B (2)C 問十五 B

A…世田谷学園中合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識や文脈力、論理的思考力で、得点に大きく差がつく問題
C…国語力がないと歯が立たない問題

総評

今年度の1次試験は昨年に引き続き、大問は論説的文章の一題のみで、文学的文章の出題はありませんでした。問一が漢字、問二が言葉の意味を答える問題、問三が接続語、問四が空欄に動詞を入れる問題で、ここまでの構成は昨年度の1次試験と同じです。大問が一つなので素材文にじっくりと取り組めますが、小問の数は多めなので、時間的にそれほどの余裕はないと思われます。昨年度の世田谷学園の国語の1次試験では、算数の割合の計算を行う問題など、目新しいものが出題されました。今年度の1次試験では、未来におけるロボットの役割を、本文の内容を踏まえて自分で考えて記述する問題が出題されました。過去問と違うパターンの問題が出題されても焦らずに、設問の指示をヒントに答えていく練習を積んでいきましょう。

問題別寸評

岡田美智男『<弱いロボット>の思考 わたし・身体・コミュニケーション』より

問一

漢字の問題です。「所作」、「留意」、「動員」、「提起」など、しっかりとした知識がなければ正解できない問題も多く、難易度は高めでした。

問二

ことばの本文中での意味を選ぶ問題です。小学生が日常では使わないことばが多く出てきて、難易度は高めでした。「健気=幼い子が困難に立ち向かう様子」、「無頓着(むとんじゃく)=細かいことを気にかけない様子」、「甲斐甲斐しい=積極的かつ効果的に働いている様子」という基本的な意味をおさえたうえで、本文中の使い方として適切なものを選びましょう。Ⓓの「鳥瞰(ちょうかん)=高いところから見下ろすこと」を知っている受験生は少ないと思います。この場合は、傍線部の前にある「その対象からすこし離れて鳥瞰的な視点を取る」という部分から類推しましょう。

問三

aからeにあてはまる接続語を選ぶ問題です。段落の最初にある接続語は段落と段落の関係を考えて、段落の途中にある接続語は前半の文章と後半の文章の関係を考えて選びましょう。今回の問題は易しめでした。全問正解したいところです。

問四

本文の空欄に動詞を入れる問題です。候補となる動詞が提示されているので、難易度はそれほど高くありません。「推し量る」「意表を突く」という表現はこの機会に覚えておきましょう。

問五

傍線部の説明を選ぶ問題です。お掃除ロボットとこれまでの家電との違いを選びます。傍線部の近くにある似た表現から選択肢を選ぼうとすると、正解が複数出てしまいます。このような時は、正解の中でより抽象度が高く、広い範囲をカバーしているものを選びましょう。本文と同じ表現を機械的に探してしまい失敗した受験生が多数いたことと思われます。

問六

傍線部の言い換えを選ぶ問題です。傍線部の「主客転倒」ということばの意味を知らなくても、明らかに間違っている選択肢ばかりなので簡単に正解が導けます。

問七

傍線部の理由を選ぶ問題です。お掃除ロボットが「不思議な存在」であるということは、理屈に合わない部分があるということです。○○であるはずなのに××である、という逆接の形になっている選択肢を探しましょう。傍線部の段落の内容全体をまとめているものが見つかります。段落の一部分だけをクローズアップした選択肢を選んではいけません。

問八

空欄に当てはまる文章を選ぶ問題です。空欄は、前後の文と同じ内容の言いかえ表現になっています。傍線部の前後にある「原因を夏の暑さに求めはじめた」「なにかのせいにしてしまおう」の両方に共通した内容を選びましょう。本文の言葉がある=正解、ではありません。

問九

空欄に当てはまる対となる言葉を書く問題です。このような問題を解くときに、自分の頭の中だけで探すと時間がかかってしまいます。似たような内容がないか、傍線部の前後を探してみましょう。ヒントが見つかることがあります。空欄「い」の後ろにある表現を探し、その反対の言葉を「う」に入れましょう。

問十

傍線部の内容を説明している一文を抜き出す問題です。「盲点」とは見えていない点という意味なので、この場合は鳥瞰的な視点のマイナス面を探します。「鳥瞰」という言葉や考え方は傍線部以前には出てきていないので、傍線部より後のところを探します。そうするとマイナス面をまとめて詳しく説明している部分が発見できます。

問十一

問いの文章の空欄に入る言葉を抜き出す問題です。一般的な考え方と違う作者独特の思考様式に従わなければいけないので、かなりの難問です。内部の働きに注目するのか、外部の働きに注目するのかがポイントです。直前の部分では「わたしたちの視点」は「ロボット内部の働き」を見ているとありますので、「ロボットの視点」はわたしたちと逆のことを見ていると考えられます。ロボットの外部のことを表している言葉を探しましょう。傍線部より前の部分に、蟻とロボットに共通する六字の言葉が見つかります。

問十二(1)

傍線部の言葉から、二つのテーマに共通する部分を選ぶ問題です。傍線部より前にある「蟻の足跡」の特徴をとらえていれば、簡単に解ける問題です。

問十二(2)

傍線部の言葉から、二つのテーマに共通する部分を、解答用紙の形式に沿って答える問題です。『LINEでの会話を「蟻の足跡」にたとえたとき』という設問の表現から、両者の似ている部分を記述することが求められていると気付かなければなりません。蟻の足跡は、蟻の個体としての機能と、それを取り巻く環境の両方に要因があると書かれています。そうすると、会話の中のアイデアは、学生たち個人と、グループ全体の両方の要因によって出てきたものと考えられます。これを肉付けして解答としましょう。

問十三

傍線部の疑問に対する返答を選ぶ問題です。まずは設問にある「このこと」が何を指しているのかを探します。直前の部分を見ると、「(お掃除ロボットが)壁にぶつかって進行方向を変えていただけなのに、結果として部屋の中をまんべんなくお掃除してしまったこと」であると分かります。これまでの設問でも再三出てきている「個体としての機能とそれを取り巻く環境の双方に原因がある」という筆者の主張に沿った選択肢を選びましょう。

問十四(1)

合否を分けた一題で解説します。

問十四(2)

本文全体をふまえて自分の考えを記述する問題です。「進化した機械や技術によって人間の仕事が奪われる」というテーマ自体はそれほど目新しいものではありませんが、本文の筆者はロボットやAIの<不完結さ>に注目し、それらの<弱さ>をプラスのものとして捉えています。したがって、不完全であることのプラス面を書かなければいけません。一般論で考えてしまい、弱さ=よくないこと、と誤解してとらえてしまった受験生は一定数いたことと思われます。ロボットやAIが完璧ではないゆえに、人間と一緒に仕事をする状況が生まれ、それが新たなアイデアや可能性をもたらしてくれる、ということを書きましょう。

問十五

本文の内容に合致するかしないかを選ぶ問題です。一つ一つの内容は本文を参考にすれば簡単に答えられますが、最後の問題であるということもあり、本文の該当箇所を探すのに時間がかかってしまった受験生がいたことが予想されます。お掃除ロボットに対する人間の行動についての箇所、蟻の行動を通して人間の盲点を見ている箇所、LINEでの会話についてまとめている箇所を参考にして答えましょう。

合否を分けた一題

問十四(1)

傍線部について、筆者の主張をふまえ、設問の指示に従って説明する問題です。一見すると難しいようですが、設問の指示が明確なので、指示の条件に従って一つ一つ解答していけばスムーズに答えることが可能です。設問にヒントがあることを理解せずに答えた受験生と、設問のロボットと筆者の主張に共通の構造があることに気が付いた受験生との間で、大きく差がついた問題だと考え、合否を分けた一題として取り上げることにしました。

考え方
設問の指示に『次に挙げる三つの特徴から、このロボットの「<不完結さ>や<弱さ>」を明らかにしたうえで』とあるので、まずは三つの特徴から、ロボットの欠点をまとめます。

(ロボットの三つの)特徴
①このロボットの大まかな構造は、上部はかご、下部はそれをのせる車体となっている。
②落ちているゴミを自ら発見し、そのそばまで移動する。
③落ちているゴミのそばでかごを揺らす動作をする。

設問に明確な解説はありませんが、①のかご構造と②のゴミ発見機能から、このロボットはゴミを捨てるため=掃除をするためのものだと考えられます。しかし、本文に例として出されているお掃除ロボットと同様に、このロボットだけでは掃除はできません。できないことを具体的に書いてまとめます。

このロボットの<不完結さ>や<弱さ>
ロボットの働きだけでは、落ちているゴミを拾ってかごに入れることも、かごに入ったゴミをゴミ箱に捨てることもできない。

設問に、このロボットが持つ『「可能性」を説明しなさい』とあるので、上記の欠点が、どういうプラス面につながっていくのかを書きます。傍線部③の直前に書いてある、お掃除ロボット「ルンル」の長所を参考にしましょう。

(ロボットが持つ)可能性①
ロボットに<弱さ>があることで、人間が掃除に参加する余地を残し、部屋を片づけたという達成感も与えてくれる。

また、最終段落に、ロボットの弱さから引き出されるプラス面のまとめがありますので、ここも付け加えます。

(ロボットが持つ)可能性②
ロボットが落ちているゴミのそばでかごを揺らす動作をすることで、人間の参加を上手に引き出し、掃除に対する新たな意味を生み出すことができる。

全部をまとめると以下のようになります。

このロボットの働きだけでは、ゴミを拾うことも運ぶことも捨てることもできない。そのような<弱さ>を持つロボットが、落ちているゴミを発見しそばでかごを揺らすことで、人間がロボットを放っておけなくなり、掃除に参加しゴミを捨てるようになったり、部屋を片づけたことやロボットの手助けをしたことに達成感を持ったりする可能性がある。
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