A…浅野中合格を目指すなら、確実に得点したい問題。標準的な知識問題なども含む
B…やや難度が高く、論理的思考力で文脈をとらえることが求められる問題
C…かなり難度が高く、失点しても致命的ではないが、正解すると得点差がつく問題
一 | 問一 (1)A (2)B 問二 B 問三 A 問四 A 問五 B 問六 B 問七 B 問八 C |
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二 | 問一 B 問二 C 問三 B 問四 C 問五 B 問六 A 問七 B 問八 A 問九 C 問十 B |
三 | A(漢字の読み書き)ただし、②・⑦はB |
物語文で出典は椰月美智子の「14歳の水平線」でした。東京から天徳島に転校してきたタオのことを良く思わない孝俊が、無理やり、海に突き落としてしまうという事件が起きます。その際に、保生が自分の考えをしっかりと主張し、「おれ」にも徐々に心情の変化が現れはじめるという場面です。難解な語句はあまり含まれておらず、物語の展開も分かりやすいものだったと思います。したがって「解く技術」が問われる問題と言えます。
ア(「眉根を寄せる」)は平易な語彙問題で、受験生にもおなじみの慣用句でしょう。イ(「へどもど」)は言葉自体は知らなくても、前後の文脈から類推できますが、2の選択肢がまぎらわしいかもしれません。
二十~二十五字の記述問題です。設問文に「本文をふまえて」とありますが、これは「本文全体をふまえて」という意味でしょう。傍線部①のように「おれ」が「もやもやする気持ち」でいるのは、のちの展開で分かるように、孝俊が転校生のタオを快く受け入れていないことを気にしていたからだと考えられます。なお、ここでは「気持ちの理由」を問うていますので、心情語は入れなくてもよいでしょう。
傍線部②の前に着目しましょう。「おれ」がタオのことを考えているときに、突然、タオ本人が出現したことに驚き、思わず声が裏返ってしまったのです。
何と、この問いは選択肢が4択ではなく5択になっています。本年度の浅野の新たな試みです。ただし、落ち着いて文章の流れをつかめば、さほど難しくはありません。前述したように、孝俊はタオのことを良く思っていないので、意地悪をしようとたくらんでいるのです。
この場面までで分かるタオの性格と、空欄の直後の「その表情でまた孝俊がイラついたのが見てとれた」に着目しましょう。「東京人はダメなんだよ」と孝俊にきつく言われても、タオは全く気にしていないのです。主観を通さずに答えるのがポイントです。
再び5択の記号選択問題になります。傍線部⑤にあるように、孝俊は「口をつぐんで」「一緒に頭を下げただけ」なのです。ここから、自分の行いを反省して謝罪しようという意思はないことが読み取れます。
傍線部⑥を含む一文に着目しましょう。「タオんちのおじさんも…にこにこ笑っていた」とあります。孝俊がタオを突き落としたことを責めずに、水に流そうとしていることが分かります。
傍線部⑦に「逆」とありますが、何と逆なのでしょうか。傍線部⑦の直前の孝俊の台詞である「保生はここ(=天徳島)の神様とか、おばあたちをばかにしている」を受けて、それとは「逆」だと言っています。保生は天徳島やそのしきたりのことを軽視しているのではなく、みんなで仲良くすることが、天徳島にとって良いことなのだと思っているのです。
論説文で出典は、平川克美の「路地裏の資本主義」です。昨年度の論説文は、池上嘉彦の「記号論への招待」(岩波新書)からの出典で、中学受験生にとってはかなり難しい内容のものでした。本年度は、本文レベルは緩和された感があります。そのぶん、物語文と同様、「解く技術」が要求されると言えます。
傍線部の内容を問う問題です。傍線部が反語的な内容であることを読み取りましょう。そのあとの文脈からも、「生きていくためには、心だけでなくお金も大切である」という内容が推察できます。
問一と連動した問題です。傍線部①の言葉に、「お金に対する距離感がいい」と筆者は述べています。すなわち、実際には「心がすべて」だとは言い切れないと考えているのです。
傍線部に「一元的」とありますが、ここでは「一面的な見方」という否定的な意味合いで使われています。傍線部に続く段落で「お金は身の回りのものすべてのものと交換可能で、幸福の基準である」という考え方を筆者は述べています。
「修飾する語句を選ぶ」という文法の問題ですが、かなり紛らわしいです。傍線部「この」が指し示す内容(「身の回りのすべてのものがお金と交換可能である」)も併せて確認すると、解きやすくなります。
二十五字の記述問題です。「合否を分けた一題」として、後ほど解説します。
空欄前に着目しましょう。親に大学に通うための学費を出してもらっているにもかかわらず、毎日喫茶店で過ごしていたら、普通は「後ろめたさ」を感じるはずです。
指示語の問題です。傍線部「こういう場所(ライオンという喫茶店)」の説明は、傍線部前の<中略>から傍線部直前までの内容をまとめた選択肢を選びましょう。筆者は、大学生のとき、「ライオン」で社会との接点を持ち、将来の目標を模索していたと考えられます。
空欄の直後から、筆者はスターバックスのようなしゃれた雰囲気のお店にはなじめなかったことが分かります。それを踏まえて選べば、難しくはないでしょう。
傍線部の直後で「どういうことかというと…」と説明がされています。「ボーッと半日を過ごすような人間が生きていくのが難しい時代になった」「無為の時間を過ごす余裕は見つからない」などに着目して、現代社会の合理主義的な内容を踏まえた選択肢を選びます。
本文の語句を抜き出す問題は、文中で繰り返されるキーワードであることが多いのです(特に浅野はその傾向が強いです)。筆者が喫茶店を開業するにあたってこだわったこととは、かつて自分自身も過ごした無為の「時間」を提供することであると考えられます。
②の「枚挙(マイキョ)」、⑦の「帰結(キケツ)」、⑥の「博愛(ハクアイ)」など、すべて小学生で習う漢字からの出題ながら、点差がつくという絶妙な作問です。漢字の学習は日ごろからコツコツと積み重ねていきたいものです。
浅野中の国語というと「記号選択問題や抜き出し問題が中心」という印象があります。もちろんそれは間違っていませんし、今後もその傾向が大きく変化することはないと考えられます。したがって、浅野中の国語攻略のカギは、まず記号選択問題のパターンを熟知することだと言えるでしょう。
一方、記述問題はどうでしょうか? 以前は出題されていた意見作文型の記述問題は、ここ数年見られません。今後はおそらくオーソドックスな記述問題が出題されると思われます。記号選択問題がある程度以上得点できたら、最終的な合否を分けるのは記述問題ではないかと私は思います。「合否を分けた一題」では記号選択問題ではなく記述問題を取り上げたいと思います。
では、「合否を分けた一題」として、二の問五を解説しましょう。
「傍線部⑤『商品とは人間の労働時間が凝固したものだ』とありますが、どういうことですか」と問うています。「どういうことですか」と問うのは、傍線部に分かりにくい言葉が含まれているからです。ここでは、設問文の誘導にあるように、「凝固(=こりかたまるということ)」が比喩表現で分かりづらいので、比喩を用いない表現に言い換えましょう(これを「比喩の一般化」といいます)。
傍線部の次の段落の中に、「人間の労働時間だけが商品の価値を決定付ける条件ならば」、「人間の労働時間が商品に価値として凝固するのであれば」と似たような表現があります。この二文は同内容であることに気づけば、ここから「凝固する=価値を決定する」という図式が導けます。
解答例としては以下を挙げておきましょう。
(商品とは)人間がかけた労働時間の量によって、その価値が決まる(ものだということ)。
浅野中が考える模範解答は分かりませんが(学校発表はありません)、少なくとも、試験時間の限られた中で中学受験生が導き出す解答としては上記のもので十分ではないでしょうか。