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国語の合否を分けた一題

渋谷中入試対策・国語の合否を分けた一題(2020年度)

難易度分類

問1 A 問2 B 問3 B 問4 B 問5 B問6 C 問7 B 問8 A
問1 A 問2 A 問3 B 問4 B 問5 C問6 A 問7 B

A…渋谷教育学園渋谷中合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識や文脈力、論理的思考力で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度・処理量から判断し、部分点を拾えれば良しとする問題

問題総評

例年同様に、物語文が一題、論説文が一題という出題でした。問題数も例年通りで、過去問対策をしっかり行っていれば、実力をしっかりと発揮できた受験生が多かったでしょう。漢字を除けば、語句や文法に関する出題はありません。これも、ほとんどの年度で共通している傾向です。目新しい問題としては、物語文の最後に対話文形式の出題があったことです。先生と生徒たちが、物語文の内容について行っている議論を、穴埋めさせる形で出題されています。過去にこのような出題がされたことはないので、ここで少し戸惑った受験生がいるかもしれません。しかし、この議論の中で物語文のテーマが明確に示されているので、素材文の読み取りがいまひとつうまくいかなかったという受験生には、ここが大きなヒントになった可能性はあります。渋谷教育学園渋谷の出題の特徴は、選択肢問題にあります。大部分が選択肢の出題なのですが、選択肢自体がかなりの長文であることがほとんどです。素材文そのものを読み解く力とあわせて、選択肢の文章を正確に把握する力が求められます。正しく読み取れていれば、これが正解とはっきりわかる選択肢ばかりなので、選択肢問題としては外連味のないストレートな良問です。5年くらい前までは微妙な選択肢問題が多く、合格者平均点も50点前後になることが多かったのですが、ここ数年は合格者平均点が70点前後になることがほとんどです。これは、選択肢問題が少しわかりやすくなった影響かと思います。表面的な知識やテクニックではなく本質的な文章読解力が問われているので、豊富な語彙力と正確な文脈把握力を鍛えていくことが合格に近づく方法です。

問題別寸評

大問1.物語文 星新一『城のなかの人』
問1

漢字の書きが4題です。難しいものはないので、すべて確実に得点したいです。

問2

淀君と秀頼の考え方の違いを問う選択肢問題です。正解以外の選択肢は、淀君と秀頼のどちらかの考え方が素材文の内容と異なっています。片方だけに注目していると、どれも正解のような気がしてくるので気を付けましょう。

問3

箱とその中身を見たときの秀頼の心情を問う選択肢問題です。ポイントは箱の中身についての表現で、そこに注目すると、答えはウかオしかありません。少し迷うかもしれませんが、ウについては選択肢文の「不可解なものによって成り立つ」の部分が、ややおかしいです。

問4

母である淀君の様子を、秀頼がどう感じているかを問う選択肢問題です。アとウで迷う可能性がありますが、ウの選択肢文は「冷静に語る母」となっています。確かに語っている内容は「冷静」と取れなくもないですが、それを語っているときの淀君の様子は、素材文を読む限りは「冷静」ではありません。むしろ「陶酔」している印象です。

問5

ここからは物語のテーマ性に関わる出題になっていきます。秀頼が感じた「他人と同格になる楽しみ」とはどういうことかを問う選択肢問題です。秀頼が、生まれたときから良くも悪くも特別扱いをされてきた存在であったということ、さらにそのことに窮屈さを感じていたこと、の2点が理解できていれば、答えは明らかです。他の選択肢はすべて的外れです。

問6

淀君の心情変化を説明させる記述問題です。視点人物外の心情記述なので、難易度が高いです。傍線部よりかなりあとに「母上の人生におけるひとつの旗印として、わたしが存在する」という文章があります。ここを手がかりに、淀君が秀頼を単なる自分の息子としてだけ見ているわけではない、ということをつかむ必要があります。変化を問われているので、「~から~に変わった」という形にしなくてはいけないことにも注意しましょう。

問7

秀頼がどのようなことを理解したのかを問う選択肢問題です。物語の終盤で頻繁に登場する「旗印」という言葉を正しく理解できているかが鍵です。ここでいう「旗印」とは、人生の目標についての「象徴」ということです。それが理解できていれば、答えはエしかありません。また、「象徴」として見られているということは、ひとりの人間として見られているわけではない、と秀頼が感じているのだ、ということも押さえましょう。

問8

渋谷渋谷の問題としては、目新しい問題です。先生と3人の生徒が、素材文の感想について話しあっていますが、3か所が空欄になっていて、そこを埋めさせる問題です。(1)と(2)は素材文からの抜き出し問題になっていて、(3)だけは選択肢問題です。難しくはないですが、歴史に関する知識が少しだけ必要です。また、「旗印」「キャラ」「役割」ということが、物語のテーマであることが、この会話文からもわかります。

大問2.論説文 中島義道『哲学の教科書』より
問1

漢字の書きが4題です。物語文と同様で、ここはすべて確実に得点したいです。

問2

「科学の問い」について、筆者が何を重要と考えているかを問う選択肢問題です。素材文の前半部分を正しく読み取れていれば答えはオしかありえません。また、一般的な意味での科学について考えても、やはり答えはオしかありえないので、非常に簡単な問題です。

問3

筆者の主張の根拠を問う選択肢問題です。冒頭と結びがすべての選択肢文で完全に一致しているので、「科学的客観性」について筆者がどう述べていたかを正確に把握する必要があります。迷うとすればイとウですが、ウについては「より多く」という部分が不適切です。

問4

筆者の主張と合致する具体例について考えさせる選択肢問題です。筆者のいう「愛」「愛情」ということが理解できていれば簡単ですが、それが小学生には難しいかもしれません。また、「すべて選び」という形なので、そこが難しかったかもしれません。「合否を分けた一題」で詳しく解説します。

問5

問4に続いて、筆者が「愛」ということをどう考えているかについて記述させる問題です。問4で「個物性に向き合う」ことが「愛」だということを押さえられていれば、その流れで書くことができたかもしれません。しかし、小学生の記述問題としては難易度が高いでしょう。「愛は科学とは絶対的に相いれない」「属性ではなくその人だから愛する」「なおそれでも『愛する』」などの文章をうまくまとめあげる力が必要です。

問6

筆者が「哲学」というものをどう考えているかについて記述させる問題です。問5に比べればこちらは簡単で、素材文の最終盤で「哲学とは~求め続ける営み」という文章があります。この文章から少し言葉を削って書き抜けば、まったく問題のない解答になります。記述問題というよりは実際には抜き出し問題に近いです。

問7

素材文全体の構成を問う選択肢問題です。「哲学」と「愛」は個物性に向き合うという意味で近いものであること、また、個物性に向き合えないという点において「科学」は「哲学」とは異なるものであること、以上のことを説明している文章であることが理解できていれば、選択肢はエしかありえません。

合否を分けた一題

大問2
問4

筆者の主張に合致する具体例を考えさせる選択肢問題です。すべて選び、という形になっていることにも注意しましょう。筆者の主張を正しく受け取れていれば、明確に2つの選択肢が選べます。以下に解説します。

考え方

まず、「個物性に向き合っている」とはどういうことかを考えてみましょう。筆者はこのことを説明するために「愛」ということについて説明しています。筆者にとっては、「個物性に向き合う」ことと「何かを愛する」ことは、ほとんど同じことです。より正確には「個物性に向き合っていないなら、それは愛とはいえない」と考えています。ですから、「個物性に向き合っている」具体例を考える、ということは「何かを愛している」具体例を考える、ということと、ほとんど同じです。「個物の個物性に興味を抱く『愛』という現象を見ればよくわかります」という文章のあとを、よく読んで確認しましょう。

筆者は、シェーラーの言葉を引用しながら、「愛している論証を冷静に正確にやり遂げたら~愛からは遠ざかります」と述べています。さらに「計測可能であり序列可能なものはすべて愛の敵対物です」とも述べています。

つまり

データや根拠をあげて、理由を明確にできる
 ↓
それができるなら、それは愛とは言わない

と主張しているのです。
その証拠に「愛する対象がもし個物なら、厳密にはいかなる理由もいえないはずなのです」と述べています。さらに、「財産や美貌や名声などすべての外面的なものがなくなっても、なおそれでも『愛する』ところに、愛情物語の神髄はあるわけです」とまで述べています。

つまり

わかりやすい理由がなにもなくても、それでも大切だ
 ↓
そういう態度こそ、愛と言うのだ

と主張しているのです。

以上のように考えていくと、「~から」とか「~ので」とか、理由がついてしまっては愛とは言えない、ということになります。逆に「~でも」とか「~だが」とか、「それでも」という感じがあるのが愛だということになります。

「~でも」「~だが」は〇
「~から」「~ので」は✕

以上のことを理解した上で、選択肢の文章をひとつずつチェックしてみましょう。すると、エの選択肢文は「~ので」、オの選択肢文は「~から」、カの選択肢文は「~ので」となっています。ですから、これらはすべて✕です。イの選択肢文にはそういう表現はないですが、しかし明らかに「理由」が述べられているのでこれも✕です。
一方で、アの選択肢文は「~だが」、ウの選択肢文は「~ても、~ても」となっています。ですから、この2つの選択肢は筆者の述べる愛のある態度、すなわち「個物性に向き合っている」ということに合致します。
以上のことから、アとウを選択するのが正解となります。

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