一 | 問1(A) B (B) A 問2 A 問3 A 問4 A 問5 全てA 問6 B 問7 A 問8 A 問9 両方ともA |
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二 | 問1 B 問2 B 問3 C |
三 | 問1 すべてA 問2 すべてA |
A…確実に得点したい問題
B…知識や文脈力、論理的思考力で、得点に大きく差がつく問題
C…国語力がないと歯が立たない問題
今年度の早稲田実業は大問3つの構成となっており、例年通りの出題でした。昨年から大問2だけは記述メインの問題へと大きく様変わりしましたが、今年度はいよいよ大問2だけはすべて記述となりました。早稲田実業も記述力のある受験生を求めだしたという表れでしょう。
大問一は、元夫と離れて暮らしている女性が主人公の物語文でした。自分のことしか考えられない夫から、ふいに電話がかかってきます。少し緊張した様子から夫が心を改めてくれたと期待しますが、そんなことはなく、最終的に夫から離れ、息子とともに生活していく覚悟が固まる、そんな話の流れです。小学生には理解しづらい内容と考えますが、主人公の心理を追って読んでいけば、大人の話に惑わされず解けるものだと言えます。選択肢問題がほとんどであるのも難度を下げています。
大問二は村上春樹さんのエッセイ『シドニー』からの出題でした。村上春樹さん独特の言い回しが散見され、記述としてまとめるのはなかなか骨が折れる問題です。しかし、使用後の指定があることから、その言葉を本文中から探し、その前後の内容を、問いで聞かれていることをふまえつつ読んでいけば、答えが書ける問題と言えます。
大問三は、漢字の書き取りと漢数字のあることわざの問題でした。
A「とってつけた」は答えの選択肢が辞書的な表現ではない上に、選択肢の言葉自体の意味も知らない可能性があるので、難しいと考えました。B「おもねる」はこれまでの話の展開から意味が推測できると考えます。
前書きを読んでいれば、夫が緊張していることに関し、主人公がどういう心理の表れとして理解したかを推測できます。正解選択肢以外が言い過ぎであることからも、難度は低い問いといえます。正解すべき問いです。
元夫が離れて暮らす息子の運動会を見たがってくれていると主人公が思い込んだことが線部の前に書かれています。正解すべき問いです。
線部の直前の元夫の会話文は、息子への愛情を示したものではなく、自分の仕事のことでした。このことを主人公がどう感じるかを推測するのは容易といえます。正解すべき問いです。
③の答えの切り取り方で少し悩むと思いますが、①~③すべて線部のすぐ後にあるので、早稲田実業対策をしてきた受験生には落とせない問いです。また対義語の問題は、やはり線部のすぐ後ろに「組体操ってどうなの? って主張」という表現があるので、この言いかえとなる熟語を考えます。正解してほしい問いです。
線部の後の「気になるでしょう? 息子の小学校でそんな事故があったなら。」という言葉が、本心からのものではないことが、今までの話の流れから読み取れたら正解する問いですが、あくまで「息子」にこだわっている主人公という点を見落とすと間違えるかもしれません。やや難しい問いと考えます。
Xは元夫が自分の本心を言う前なので、主人公の要求を受け入れていない一方で、Yは自分の本心を言った後なので、主人公に配慮することを行いだした、という違いがあります。元夫がどういう人物か、とらえられていれば解けます。正解すべき問いです。
「くっきりと」が元夫との関係を完全に切る決心を表しています。正解すべき問いです。
「天国と地獄」が何を象徴しているのかを答える問いです。ひとつは「天国と地獄」という言葉自体から、もうひとつは線部の直前にある曲調の説明「愉快なリズムに、一抹の哀れ」から推測します。正解すべき問いです。
線部の直後にある「競技」「主題」を確認します。すると自ずと答えの内容も見えてきます。基本的には難度の低いものなのですが、独特の表現の中から筆者の意見を読み取るのはなかなか難しいと考えます。問いのおさえが勝負を分ける問いと言えます。
問いの説明文に逆接があることに気づけば、答えの方向性が見え、すんなりと書ける問いでした。前半の空欄に肯定内容、後半の空欄に否定内容を書けばよいのです。ただし、否定内容は筆者の比喩的表現を言い換える必要があり、難度が上がっています。やや難しいと考えます。
合否を分けた一題で説明します。
頻出の同訓異字や送り仮名が悩む漢字など、しっかりと漢字の勉強をしてきた受験生が報いられる出題でした。全問正解すべき問いです。
こちらも頻出のことわざばかりです。全問正解すべき問いです。
今回は大問二の問3を、合否を分けた一題に取り上げます。早稲田実業の定番になるであろう、必ず用いる言葉を指定してくる記述問題です。
―線3「観客に対してこそドーピング検査をするべきだ」とあるが、本文全体をふまえて筆者がこのように述べる理由を八十字以内で説明しなさい。「思い込み」「痛み」「批判」という三つの言葉を必ず用いること(使用する順番は問わない)。ただし、句読点等の記号も一字として数える。また、あたえられた書き出しは字数にふくめない。
・筆者は、観客が 八十字以内
解き方の手順
まず、問いで問われていることの確認をします。
①筆者が「観客に対してこそドーピング検査をするべきだ」と述べる理由
→「から」で答えを終える
→観客に関する批判をしている
②文章全体をふまえる
→線部の前後だけで正解の答えは書けない
③「思い込み」「痛み」「批判」を用いる
→本文から探す
④書き出しが、「筆者は、観客が」である
→答えの文末に「筆者が」という主語に対応する述語を書く
→答えの途中に「観客が」という主語に対応する述語を書く
⑤空欄に「。」がない
→答えの最後に「。」をつける
次に、用いる言葉を本文中から探します。
「思い込み」を探すと、その前後に「オリンピックは退屈じゃないはずだという強い思い込み(事実決定)があるからじゃないか」と書かれています。これは「観客が」という主語に対応する述語として使えます。もちろん「じゃ」という話し言葉は使えまません。使う場合は「では」に直します。
「痛み」を探すと、その前後に「僕らは退屈さの中に、固有の意味を見いだしていくことになります。意味というのは、一種の痛み止めなのです。」と書かれています。「思い込み」の部分と「退屈」という言葉で共通点が確認できました。ここを関連させて書けば文として繋げられます。
一方、表現に注目すると、「一種の痛み止め」という言い方は、たとえです。言い換えが必要です。今回は「退屈」という言葉をと関連するものとして「感じなくなる」という言い換えが可能でしょう。
「批判」は本文にはありません。言い換えた言葉を探すと、実は―線3それ自体が「批判」的表現だったのです。この点に気づかないと、問いで求められた「批判」の使い方ができなくなります。―線3の直後「不健全な分泌物を含んだ精神」という表現は、筆者が批判する内容です。「分泌物」はたとえなので使えませんが、「不健全な…精神」は答えに使えます。
以上のように、問いで指定された言葉をヒントにすることで、答えとして使う言葉もわかってきます。
【解答例】
(筆者は、観客が)オリンピックは退屈ではないという思い込みを持ち、さらにオリンピックに固有の意味を見いだし退屈と感じなくなっているのは、不健全であり批判されるべきだと考えるから。(79字)