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理科の合否を分けた一題

早実中等部入試対策・理科の合否を分けた一題(2021年度)

難易度分類

[1] 問1 B  問2 B  問3 ➀ A  ② A  ③ C  問4 A  問5 A
[2] 問1 A  問2 ➀ A  ② A  ③ B  問3 C  問4 B
[3] <Ⅰ> 問1 A  問2 B  問3 B  問4 B  問5 C
[3] <Ⅱ> B

A…早稲田実業合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えればよしとする問題

出題総評

いわゆる「受験勉強としての理科」では太刀打ちできない問題が数多く出されています。今年の受験生がまだ5年生だった2019年に発表されたノーベル賞の話題まで入っていますので、時事問題も含めて、受験用に付け焼刃で覚えたものではなく、普段からニュースに関心を持っているかが問われるような入試でした。
解答形式では、記号選択が6問、数字が3問、言語が7問、記述が2問、作図(グラフ)が1問でした。主な出題単元は、大問1が「大地の変化(時事問題含む)」、大問2が「生物と環境」、大問3が「物理化学総合」という内容です。一般教養や時事問題も含んでいるため、完全な分類はできませんが、平均的には物理・化学・生物・地学がほぼ均等に出題されていたと言えるでしょう。

問題別寸評

[1]

2013年の再噴火によって新島ができ、元からあった島とつながったことで話題となった「西之島」に関連する問題です。大人にとってはつい最近のことという感じがしますが、活発に火山活動が起こっていた2013~2015年というと、今年の受験生たち(2008~2009年生まれ)が4~7才くらいの頃のことですから、特に問1・問2は推測するしかなかったと思います。

問1

西之島の位置を知らなければ、問題文から推測するしかないでしょう。
太平洋上に広く分布する小笠原諸島が住所としては「東京都」になるということを知っていれば、問題文の「太平洋にある西之島……」という表現から予想できたかもしれません。

問2

問1と同様に、西之島の位置を知らなければ推測する必要があります。
日本付近にある4つのプレートうち、「太平洋にある」という表現から「太平洋プレート」が関連していることは容易に想像がつきます。そうなると、もう一つのプレートは隣接する「北米プレート」か「フィリピン海プレート」の可能性が高く、わざわざ「太平洋にある」という表現を使うくらい日本の本島から離れているとしたら「フィリピン海プレート」だと推測できます。

問3

火成岩の種類については、基礎知識として覚えているでしょう。いずれも地表付近で急速に冷え固まってできる「火山岩」ですから、結晶のつくりは「斑状組織」です。
なお、③の「外見上の特徴」は、何を書いてよいかが分かりにくかったと思います。もちろん、斑状組織になっていることも外見上の特徴ですが、②で図を選ばせたのと同じ特徴を言葉で説明させるだけなら、同じように「結晶の様子」という表現を使うはずですから、ここはもっと大きな特徴を求めていることになります。問題文の中で「安山岩質溶岩」「玄武岩質溶岩」という言葉を使い、「溶岩」についての話をしているわけですから、求められているのは「小さな穴(火山ガスが抜けた跡)が全体的に見られる」という特徴です。

問4

溶岩ドームは、成層火山をつくる「安山岩質溶岩」や、たて状火山をつくる「玄武岩質溶岩」よりも溶岩(マグマ)の温度が低いために粘り気が強いという特徴がありますので、高温の火砕流で島がとかされるということは起こりません。

問5

キラウェアは、代表的なたて状火山です。たて状火山はマグマの温度が高いことで粘り気が小さく、流動性が高いために低くなだらかな火山になっています。また、そのようなマグマが地表付近で急速に冷え固まると「玄武岩」を作ります。

[2]

「アオコ」というキーワードから、湖における生物の環境について考えるリード文問題ですが、丁寧に文章やデータを見ていると、解答に必要な情報がたくさん与えられていることに気づきます。
もちろん、考察する上での基礎となる知識は必要ですが、特に前半は比較的得点しやすい問題でした。

問1

湖沼の富栄養化の原因となる主な物質は、かつて生活排水(特に洗剤)に多く含まれていた「リン」や、三大肥料の一つである「窒素」です。

問2

➀については、おそらく、アは「ホシガタケイソウ」、イは「ケンミジンコ」、ウは「ミジンコ」、エは「ワムシ」、オは「イカダモ」です。アが分かりにくかったと思いますが、明確に動物性プランクトンだと分かるものが3つありますので、消去法でも答えは出せるでしょう。
②は、3ページの下から4~3行目に「光合成をするのに十分な太陽光がとどく水深は、透明度のおよそ2~2.5倍の深さまで」と書いてあり、表1のデータに「透明度:39cm」との表記がありますから、39cmの2~2.5倍……整数値では約1mであることが分かります。
③は知らないはずですし、ミジンコの体内にある色素……と考えてしまうとまず出てこないでしょう。
赤い色素と言っても、実際にはいろいろな種類が存在するのですが、中学受験生が覚えさせられている赤い色の色素と言えば、代表格はやはり「ヘモグロビン」です。同じように動物の体内に存在する赤色の色素ですから、その連想ができれば正解できる可能性のある問題でした。

問3

文中から必要なキーワードを抜き出してくると、次のようになります。

  • 湖水中の生物の死がいが増えると細菌が大繁殖をして水中の酸素をたくさん使う
  • 湖の水のpHを決める要因はおもに水中に溶けている二酸化炭素
  • 水中の植物プランクトンが光合成をするのに十分な太陽光がとどく水深は、透明度のおよそ2~2.5倍の深さまで
  • 湖の水は垂直方向で完全に二層に分かれており、上の層と下の層をまたいでの垂直方向の対流は起こっていない
  • 湖中の生物のすべてはやがては死んで最終的には細菌により分解されます

これらをつなげると正解への道筋が見えてきますが、「120字以内」という制限に合う形に加工することで時間を使い過ぎないように気をつけてください。

問4

生態系における物質の「循環(じゅんかん)」に関する話です。

3<Ⅰ>

会話文を読んで答える形式ですが、下線部に示された条件以外には重要な記載事項やヒントもないので、問1以外は(問5のグラフも含めて)単純な知識の問題と言えます。

問1

下線部(1)の条件から換算するだけです。ミスなくしっかり解きましょう。

問2

選択肢にある金属を熱伝導率の高い順に並べると、「銀>銅>金>鉄」となります。

問3

正解は「リチウム」です。リチウムイオンバッテリーは身の回りの電化製品にも広く使われるようになってきているので、ノーベル賞としての時事問題の知識がなくても聞き覚えのある用語だったかもしれません。

問4

これは、知らないと解けない問題です。
「何となく聞き覚えがある」程度では正解できないように、すべての選択肢に「吉」の文字が入っていますが、正解は「吉野 彰(よしの あきら)先生」です。

問5

与えられた100℃での飽和食塩水の濃度(約28%)より、75gの水(=約72%)に対して溶かすことができる最大量は、
 75 ÷ 0.72 × 0.28 = 29.1666……(g)
となります。問題では、「おおよその関係」までしか要求されていませんので、温度が変化しても溶解度があまり上がらない食塩の性質を知っていれば、一番高くなった100℃で30gにギリギリとどかないグラフをかけば良いことが分かるでしょう。

3<Ⅱ>

本問を「合否を分けた一題」として、詳しく後述します。

合否を分けた一題

【問題】大問[3]<Ⅱ>

➀~④のぞれぞれでAとBのどちらが大きくなるか判断できなければ正解できない問題ですので、チェックすべきポイントをしっかり見抜き、いかに時間をかけずに正しく判断するかが勝負となります。

アルコールと水とは、どのような割合でも混ざり合いますが、混ぜることで体積が減少します。
つまり、混ぜる前の体積の合計(A)と、実際に混ぜた後の体積(B)を比べるとA>Bとなり、Bの方が小さくなります。
したがって、A>Bですので、「Bの方の値が大きくなっている」にはあたりません。
なお、混ぜることで減少するのは体積だけで、重さは等しくなります。

水酸化ナトリウム水溶液50cm3に塩酸を加えていく場合、完全中和点をこえるまではアルカリ性なので赤色リトマス紙は青色に変化しますが、完全中和点をこえた後は、塩酸があまって酸性になっても、赤色リトマス紙の色は変化しなくなります。
つまり、塩酸を78cm3加えた状態(A)は、中性または酸性ということになりますので、水分を蒸発させた後には中和反応によってできた食塩しか残りません。
同じ50cm3の水酸化ナトリウム水溶液に対して、先ほどよりも多い112cm3の塩酸を加えても(B)、塩酸の余りが増えるだけで、中和反応によってできる食塩の量は増えません。
塩酸は、塩化水素という気体が溶けた水溶液ですので、どれだけ余っても水分を蒸発させたときに残る固体の重さは変化しません。
したがって、A=Bであり、「Bの方の値が大きくなっている」にはあたりません。

②とは逆に、一定量(50cm3)の塩酸に29cm3の水酸化ナトリウム水溶液を加え(A)、赤色リトマス紙が青色に変化したということは、加えた水酸化ナトリウム水溶液が余ってアルカリ性になっているということです。
ここに、より多い48cm3の水酸化ナトリウム水溶液を加えた場合(B)は、余る水酸化ナトリウム水溶液の量が増えることになります。
水酸化ナトリウム水溶液は、水酸化ナトリウムの固体が溶けた水溶液ですので、水分を蒸発させると溶けていた固体が後に残ります。
塩酸の量が等しいので、中和反応によってできた食塩の重さは等しいですが、より多くの水酸化ナトリウム水溶液が余っているBの方が、多くの水酸化ナトリウムの固体がでてきますので、「Bの方の値が大きくなっている」にあてはまります。

アンモニアはきわめて軽い気体であり、その重さは、水が気体となった水蒸気よりも少ないです。
このアンモニアを水に溶かしていくと、溶けている量が多くなるほど密度が下がるため、同じ体積(120cm3)のアンモニア水を用意した場合、うすいアンモニア水(A)よりも濃いアンモニア水(B)の方が重さは少なくなります。
したがって、A>Bなので、「Bの方の値が大きくなっている」にはあたりません。

このように、➀~④の各項目を順に見ていくと、Bの方の値が大きくなっているのは③だけということになりますので、正解は「1」です。
(答え)1

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