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理科

麻布中入試対策・理科の出題傾向分析

1.麻布中学 理科の問題

各中学の入試傾向は、年度別に単元別出題傾向を掲載している場合が多いのですが、麻布中学に関してはあまり意味がありませんので、まずは実際の入試問題を見て頂き、よく出題される単元ではなく、どんな問題か、どんな能力を問われるのか、を見てゆきましょう。

【2011年2月入試 問題1】

昨年5月に打ち上げられた日本初の金星探査機「あかつき」は、金星のまわりを回る予定でした。しかし、12月の挑戦で失敗したため、次に金星に近づく5年後に再挑戦することになりました。

①長文の読解
②時事知識

「あかつき」のおもな任務は、金星表面の探査ではなく、金星の大気の観測です。金星は大きさや重さなどは地球とほぼ同じですが、表面や大気の様子は地球とは大きく異なっています。たとえば、金星は全表面が分厚い雲、それも濃硫酸のつぶでできた雲におおわれていて、外から表面の様子は全くわかりません。

③「金星」の基本知識

また、その雲は、太陽から送られてくる光(エネルギー)を78%も反射してしまいます。つまり、金星が吸収する太陽エネルギーは.太陽から送られてくるエネルギーの22%にすぎません。一方地球の雲は、全地球の表面をおおっているわけではありません。地球全体のの反射率は30%ですから、地球は太陽から送られてくるエネルギーの70%を吸収していることになります。

④金星だけでなく、地球(身近なもの)と比較し、結びつけて考えさせる
地球の基礎知識

太陽から金星の距離は、太陽から地球の距離の0.7倍です。ここで、金星の位置Vで太陽光線に垂直な円Vと、地球の位置Eで太陽光線に垂直な円Eを図のように並べて考えると、円Vの半径は円Eの半径の0.7倍になります。また、太陽は、円Vを照らすのと同じエネルギーで、円Eを照らしていることがわかります。

⑤算数の相似の理解

これが、問題1の前文です。他校と比べると長い文章です。①長文読解能力が必要ですが、けして難しい文章ではなく、主語と述語がきっちり書いてあり、理解しやすいように配慮して書かれています。

②時事知識、③金星の基礎知識、があればさらに理解が深まるでしょう。麻布中の場合、時事問題や学習のテーマだけでなく、それと日常的で身近なものと結びつけ(④地球の基礎知識)、比較してさらに本質的な理解を深め、社会生活の中で活用できる生きた知識を獲得してゆく、という考え方が根底にあります。

また、⑤算数の相似の考え方も積極的に取り入れ、算数の世界だけではなく、現実の世界に応用できる能力が要求されています。

次に、問題を見てみましょう。

問1

地球と金星の位置で、太陽光線に垂直な1㎡の面に対して、1秒間に太陽から送られてくるエネルギーを比べると、金星は地球のおよそ何倍になりますか。もっとも適当なものを下のア~オから選び、記号で答えなさい。

ア.0.14倍  イ.0.5倍  ウ.1倍(同じ)  エ.1.5倍  オ.2倍

問2

太陽光線に垂直な1㎡の面が1秒間に吸収しているエネルギーを比べたとき、金星は地球の何%になりますか。問1で選んだ数値を使って計算し、答が整数にならないときは、小数第1位を四捨五入しなさい。

問3

金星の雲は濃硫酸のつぶでできています。では、地球の雲は何のつぶでできていますか。適当なものを下のア~オから選び、記号で答えなさい。

ア.ちり  イ.綿  ウ.食塩  エ.塩化水素  オ.水や氷

【解答・解説】

問1から難しく感じるかもしれませんが、問題を解く必要な情報は問題文にちゃんと書かれています。

・太陽から金星の距離は、太陽から地球の距離の0.7倍です。
・円Vの半径は円Eの半径の0.7倍
・太陽は、円Vを照らすのと同じエネルギーで、円Eを照らしていること

まず、文章と図によって理解することが必要です。
また、豆電球の単元で下記のような図を見たことがあるでしょう。

図01-001

豆電球がスクリーンを照らす図です。豆電球からの距離が2倍になると、照らす面積は4倍になります(照らす正方形の1辺が2倍になるため)。光りの量はAもBも同じと考えると、同じ面積を照らす光りの量を比べると、AはBの4倍になります。

この問題も同様です。円Vの半径を1とすると、円Eの半径は0.7ですから、円Vと円Eの面積の比は

円V:円E = 1×1×3.14 : 0.7×0.7×3.14
      = 1        : 0.49

になります。
円Vも円Eも同じエネルギーで照らされています(①とおきます)から、同じ面積を照らすエネルギーの量は、

円V:円E = ① ÷ 1 : ① ÷ 0.49
      = 1     : 2.04・・・

つまり、金星(円E)は地球の(円V)約2倍になります。

問1 答 オ

問2 これも問題文に計算に必要な数値は書かれています。

・金星が吸収する太陽エネルギーは.太陽から送られてくるエネルギーの22%
・地球は太陽から送られてくるエネルギーの70%を吸収

吸収しているエネルギーの量は照らされているエネルギーの量×吸収率ですから

金星:地球= 2×0.22 : 1×0.7
     = 0.44 : 0.7 = 44 : 70

44÷70×100=62.857・・・・ → 63

問2 答 63%

問3は基本的な知識問題です。

問3 答  オ

問4

下の文章の( ① )から( ⑤ )に入る適当な語を、下の語群のア~タから選び、記号で答えなさい。

地球の表面温度は全地球を平均すると約15℃ですが、金星の表面温度は約460℃です。金星が大変な高温になっているおもな理由は、金星が地球よりも太陽に近いからではありません。地球の90倍も濃い金星の大気には( ① )が96%もあるのに対して、地球の大気には( ① )がわずか0.04%しかないため、その温室効果が地球よりもはるかに強くはたらくからです。
地球ができたときには、地球の大気にも今とは比べものにならないくらい多くの( ① )があったと考えられています。しかし、高温の金星には存在できない( ② )が地球にはたくさんあります。( ① )は( ② )には溶けやすく、暖かいところで成長する( ③ )のはたらきで( ④ )となります。さらに、( ② )に溶けた( ① )は直接( ④ )にとなって沈殿することもあります。こうして地球ができたころの大気にたくさんあった( ① )はどんどん取り除かれて、( ② )に溶けにくい( ⑤ )が大気に残り、現在の地球の大気の中で一番多い成分となりました。

【語群】 ア.ちっ素   イ.酸素 ウ.二酸化炭素 エ.水素  オ.水蒸気
カ.水(海水) キ.氷  ク.食塩    ケ.鉄   コ.アルミニウム
サ.サンゴ   シ.ウニ ス.ヒトデ  セ.石灰岩 ソ.泥岩
ク.火山灰

【解答・解説】

金星が全くわからなくても、文章をきちんと読んでいけば基本的な知識で解答できる部分が多い問題です。

①金星の大気を知らなくても地球の大気の0.04%といえば直ぐにわかるでしょう。

答 ウ

②二酸化炭素が溶けやすく地球上にあるもの、また⑤は大気の中で一番多くあるものですからちっ素です。ちっ素が解けにくいものですから、選択肢の中では水になります。

答 カ

③④これが一番難しいかもしれませんが、暖かいところで成長する、から想像はつきます。③の答はサンゴですが、サンゴの骨格は炭酸カルシウム(石灰石)でできています。カルスト台地で有名な山口県秋吉台の石灰岩は約3億5000万年前にできたサンゴ礁と言われています。

③ 答 サ
④ 答 セ
⑤ 答 ア

問5

下の文章の( ① )から( ⑤ )に入る数値を求めなさい。答が整数にならないときは、小数代位を四捨五入しなさい。

地球は西から東に1日に1回転しています。赤道での地球の全周は4万kmなので、回転の速さは秒速約460mになります。北緯40度での全周は3万kmですから、その緯度での地球の回転の速さは秒速約( ① )mです。また、北緯40度付近の上空には偏西風と呼ばれる西風がふいていて、7日間で地球を1周しています。つまり、地球の偏西風の速さは、その付近の地球の速さの約( ② )%でしかなく、その速さは秒速約( ③ )mということになります。また低緯度では偏東風という偏西風よりおそい風がふいてます。ですから地球の大気は、大きくみれば地球の回転に引きずられて動いてることがわかります。

一方金星は、ごくゆっくりゆっくりと東から西に240日で1回転しています。そして、上空には4日間で金星を1週する東風がふいています。つまり金星の東風は、金星の回転の速さの約( ④ )倍もの速さで動いていることになります。金星の大きさが地球と同じだとすると金星の北緯40度ではその風の速さは秒速約( ⑤ )mになります。

こうした金星の大気の不思議を解明することも、金星探査機「あかつき」に課せられた使命なのです。

【解答・解説】

文章を理解し、基本的な知識(赤道、北緯40度、低緯度など)でイメージできれば、けして難しい問題ではありません。

① 地球は1日1回転、北緯40度付近の全周は3万kmです。

1日=24×60×60=86400秒

ですから

3万km ÷ 86400秒 = 347.2222・・・m → 347m

答 347m

② 偏西風は7日間で1周しますから、1日1周する地球より7倍おそいことになります。偏西風の速さを“1”とすると、地球の自転の速さはその7倍で“7”になり、

1 ÷ 7 × 100 = 14.285・・・→ 14%

答 14%

③ 偏西風の速度は、北緯40度付近の地球の時速の1/7ですから

347 ÷ 7 = 49.571・・・→ 50

答 50m

④ 算数の「速さと比」の考え方、「動く距離の長さが同じ場合、速さの比は時間の比の逆比になる」を応用しますと、

時間の比は

金星の自転 : 金星の東風 = 240日間 : 4日間 = 60 : 1

速さの比は

金星の自転 : 金星の東風 = 1 : 60

つまり金星の東風は、金星の自転の速さの

60 ÷ 1 = 60(倍)

になります。

答 60倍

⑤ 金星の大きさは地球と同じ、とすると、金星にふく東風は4日間で1周するので、地球の自転の1/4の速さであることがわかります。

347 ÷ 4 = 86.75 → 87(m)

答 87m

ちなみに、金星探査機「あかつき」は金星の大気の探査が目的ですが、これは地球環境の理解が最終的な目標です。金星と地球は「兄弟星」と言われ、金星は、その大きさや太陽からの距離などが地球に近く、太陽系ができた時、地球と金星は似たような形で誕生したと考えられています。
しかし、現在の金星と地球の環境は全く異なっています。なぜ、このように環境が異なってしまったのか、金星はなぜ、このような環境なのか、金星の大気について理解が進めば、地球の現在の環境や気象変動などを解明する手がかりが得られるのです。
金星探査機「あかつき」は金星全体の気象現象や地表面の探索、その他雷の放電現象や火山活動の有無などの調査も行い、金星の謎の究明に期待がもたれています。

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