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社会の合否を分けた一題

女子学院中入試対策・社会の合否を分けた一題(2013年度)

全般的分析

今年の入試でも、記述要素の増加傾向が見られます。理由・原因・説明など簡潔にポイントを押さえて、手際よく取り組むことが求められているようです。正確な知識を身につけるだけでなく、問題意識を持って学習をしてほしいという学校側のメッセージが伝わってきます。ものごとの「しくみ」や「つながり」を考えるような習慣づけを、日頃の学習から心がけておきたいところです。
また、「しっかり観察する力」、「確実な知識をもとに的確な推論をする力」、「図表を含む情報の中から、ポイントを見つけ出す力」が求められています。技術を問うというよりは、日ごろの学習の構えを問う出題が多く見られました。地図、写真、表はあるものの、「読む」力が圧倒的に求められる「文字、文だらけの問題」となっています。また、内容としては、生活に密着した知識と、社会問題に対する意識が問われていると感じられます。正確な知識の量に加えて、知識を統括する視点を持つこと、推論力、言語処理能力の高さ、説明力などが求められています。

合否を分けた一題

2013年度入試で、合否を分けた問題として1題を挙げるとすれば、
の問1の記述問題です。
女子学院中の入試問題では、記述の割合が増えてきています。その中でも、複数の表の読み取りと説明を求めるこの問題は、知識を必ずしも前提とせず、素直に設問を読解してゆけば正解できる問題であり、今後も同様の出題が予測されます。

図表からの情報の読み取りが苦手、説明を上手にまとめることが苦手、という受験生は、取り組み手順をしっかり習得して、的確に反応できるようにしておく必要があります。

さて、この問題は、「縄文時代の遺跡から出土する主な食物」と「弥生時代の遺跡から出土する主な食物」をあげた表1と、「ヨーロッパ」「西アジア」「中国南部」「中国北部」「朝鮮半島」の5つの地域で弥生時代ころに食べられていたものの一覧をあげた表2の2つの表を見比べて、弥生時代の遺跡の出土品にみられる、当時の食生活(食物の生産や獲得のしかた)の特徴を書く、というものです。

この問題には、どのように取り組めばよいのでしょうか。

まず、表1から、縄文時代と弥生時代の比較をします。
違うのは、「米」が加わっていることだけであることが、一目瞭然です。
「これを食物の生産や獲得のしかたの特徴」という設問の要求に合わせて考えると、「稲作」、つまり「農耕生活」が始まったということがわかります。ここまでは、基本的な知識で対処できます。

次に、表2から、米を食べていた地域を拾うと、中国南部、朝鮮半島があげられています。このことから、中国南部、朝鮮半島から稲作が伝わった、ということも書けるでしょう。

さらに、表2には、豚・山羊・羊・牛といった「家畜」があげられています。それに対して、表1では、魚介類・猪や鹿・鳥類といった「狩猟」によって得られる食物があげられています。ここから、日本には、家畜を飼育して食べるという食物の生産・獲得のしかたは行われていなかったことが読み取れます。

このように、基本的な対比のポイントに気づいて、上手に表の内容と結びつけることができれば、ポイントの定まった答案が作成できます。

答案例としては、

弥生時代には、日本に稲作が伝わって、米を食べるようになったが、肉類は、家畜からではなく、狩猟によって得たものを食べていた。

という形になります。

設問の(  )の中の、食物の生産や獲得のしかた、というところをしっかりてがかりとして、表の内容を比べることができれば、完答できる問題です。

ただ、知識として、縄文時代は狩猟採集生活で、弥生時代に稲作(農耕)が始まった、ということは知っていても、角度を変えて聞かれたため対応しにくかった、という受験生もいたようです。

では、このような出題に対応するためには、どのような学習が有効でしょうか。

まず、図表の読み取り、特徴の発見が的確にできるように、図表読解に早い段階から慣れておくことが必要です。ことばの集積である文章から情報を読み取る力だけでなく、図・表・グラフの解釈が求められる問題は、女子学院中に限らず、これからも増えてくることが予想されます。お子さんが、このような問題を敬遠する理由として、一問一答型でクイズ的に答える問題に慣れすぎてしまっているお子さんの場合、「読み取る」という主体的な作業・積極的な作業には心理的に抵抗が生まれるから、ということが考えられます。日頃の学習でも、意識的に、図・表・グラフを拾い出して、何を表しているか、何が読み取れるか、という主体的な取り組みをすることを習慣づけていきたいところです。

また、読み取ったことを、的確に文章で表現する練習も必要です。気づいたけれども、どう答案に表現してよいかわからない、というお子さんは少なくありません。視覚的・直感的に整理されたものを、言語的に正確に表現するためには、やはり、練習が必要です。「だいたいわかるんだけど、、、」というお子さんほど、対策が必要です。論理的に整った文章を書く練習は、国語だけでなく、社会、理科の記述でも重要です。ところが、社会・理科の記述練習は、多くの大手塾の教材で、それなりに取り上げられているものの、実際に、お子さんが作成した答案をていねいに分析して、お子さんなりの答えに練り上げるまで指導を受けることはなかなか難しいようです。ご家庭での取り組みも苦労される部分です。個別指導などでの補強が有効であり、また、必要でもある分野と言えます。

『社会の合否を分けた一題(2013年度)』 >> 1 2
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