A…駒場東邦中合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えればよしとする問題
問1 | B |
---|---|
問2 | (1)B (2)A |
問3 | (1)B (2)A (3)A |
問4 | (1)A (2)A |
問5 | (1)A (2)B |
問6 | (1)B (2)A (3)A (4)A |
問7 | (1)A (2)A (3)B |
問8 | (1つめ)A (2つめ)A |
問9 | (1)B(2)B (3)A |
2020年度の駒場東邦中は、今年も例年通り、大問が1題の出題でした。
小問総数は22問で、うち語句形式の問題が5問。記号選択が10問。記述問題が7問となっていました。記述問題の内訳として、資料・図の読み取りに関する記述は4問。理由・説明型記述が3問となっていました。記述量は例年通り1~2行です。
今年は、「外国とのかかわり」をテーマとしたリード文から、「難民」「独立」「貿易」「移民」「権利」を切り口として3分野からの総合問題形式での出題でした。地図、歴史史料、グラフ、統計資料の読み取りは昨年までと変わらず出題が見られました。一昨年、昨年に続き、難易度に大きな変化はなく、
3分野から広く出題がみられます。
40分という時間は決して長いものではないので、問題の取捨選択はもちろんのこと、「素早い処理能力」や「記述をまとめる力」、「資料を読み取る力」などの力が求められています。
駒場東邦中の試験で得点を重ねるためには、暗記に頼った学習や問題演習だけの学習ではなく、資料や地図に日頃から触れておくこと、記述を簡潔にまとめる練習が必要です。
特に記述問題は、設問の指示をきちんと整理し、指示や条件に沿って作成するよう心がけましょう。
設問の指示の整理をした段階で、解答の方向性を定めるトレーニングも有効です。
複数枚の史料や図の「共通点」を踏まえて答える問題も多いことから、資料集の活用を普段から心がけることも大切です。
(公民分野)国際連合と国際組織についての問題です。
難民問題の解決に向けて取り組んでいる組織は、総会に属する国連高等難民弁務官事務所とユニセフです。
(国際分野)
(1) アメリカとメキシコの国境に関する問題です。
北アメリカ大陸に位置する、カナダ・アメリカ・メキシコの国境です。アは、カナダとアメリカの国境です。ウは、アメリカとメキシコの国境です。
(2) 移民に関する資料を読み取り、理由を説明する問題です。
駒場東邦中の典型的な記述問題です。この問題で意識すべきことは、設問文の読み取りです。
資料の絵に気を取られることなく、設問中のキーワードを抽出して解答の方向性を定めましょう。
設問中の「…職を失うことを恐れたアイルランドからの移民たちが…中国からの移民を…追放」という部分からは、資料の絵が表す内容が読み取れます。
そして、「…鉄道会社や製造工場の経営者たちは、しばしば中国から移民を守る側の…」という部分から、この問題は、経営者たちが中国からの移民を守る立場に回った理由を問う問題であると整理できます。
経営者が中国からの移民を守る立場に立ったのは、アイルランドからの移民よりも中国からの移民の方が、人件費が安く、経営にとって利益が大きくなるからであると考えられます。
(地理・歴史分野)貿易と文化の結びつきに関する問題です。
(1) グラフを読み解く問題です。
グラフを読み解く問題も、問2の資料読み取り型記述と同様に駒場東邦中の定番問題の一つといえます。
今回のグラフの読み取りは、通常よりも難易度が高くなっています。その理由は、選択肢の文中のキーワードから年号に変換する作業が必要となることです。それぞれのキーワードを変換すると以下のようになります。
ア、「18世後半…」とあるので1700年代の後半。
イ、「…不平等条約の改正を始めた頃…」は1880年代、「…関税自主権を回復した頃…」は1911年のことです。
ウ、「…第一次世界大戦の直前…」は1914年の直前(グラフの年号では1913年)と変換することができます。
エ、「…日本が…独立を回復した…」はサンフランシスコ平和条約が締結された1951年の頃です。
変換した年号に合致する項目をチェックしていくことで正解を導くことができます。
(2) 明治時代に発達した「交通機関」を答える問題。
明治時代に発達した交通機関は、鉄道です。鉄道の発達によって八王子から横浜に通じる「絹の道」はすたれていきました。
(3)多色釣りの木版画を浮世絵(錦絵)といいます。
(歴史分野)中国との交流に関する問題。
(1) 渡来人が日本にもたらしたものに関する問題。
土偶が作られていたのは縄文時代です。家や人・馬などをかたどった素焼きの土器を埴輪といいます。
(2) 奈良時代の鑑真に関する問題。
幾度もの苦難を乗り越えて日本に来日した鑑真は、奈良に唐招提寺を建てました。
(公民分野)法律と三権に関する問題。
(1) 日本の法律制定に関する問題。
公民分野の中でも基本の問題です。選択肢のキーワードを変換できるかどうかが正解のポイントです。先議権は予算案のみです。また、法律の制定に裁判所や内閣の許可は必要ありません。
(2)投票率に関する問題。近年では、投票率の低下が目立ちます。設問中のキーワードを確認すると「政治の進め方を決める権利という観点…」とあるので、国民主権についての問題だと分かります。
選挙年齢に上限を設けることは、投票率を高めることには繋がらず、偏った意見が反映されること
になってしまいます。
(地理分野)地方都市や外国人労働者、地図の読み取りに関する問題。
(1) 岐阜県の産業や地形に関する問題。
X-1の直後の文を整理します。「…和歌山県、奈良県、福岡県…」となっているので、かきがあてはまります。次に、X-2の前後を整理します。「岐阜県の美濃加茂市は…飛騨川の合流…」とあるので、木曽川があてはまります。
(2) 五街道の宿場町に関する問題。
太田宿を通る五街道は中山道です。駒場東邦中と同じく、男女の御三家レベルの学校では、五街道に関する問題への対策は必須となります。
(3) 1960年の貿易輸出入品に関する問題。
日本の輸出の変化をおえることができているかがポイント。
1950年~60年はせんい製品、~70年代は鉄鋼、~80年・90年代は電気機械・自動車、90年・2000年代はコンピューターなどハイテク製品という移り変わりです。
(4) 2つの地図を踏まえて記述する問題です。
まずは、設問の整理を行い、解答のわく組みを定めます。
「地域Aの地図と地域Bの地図の違い」+「地域Aでの外国人割合が高い理由」となります。
地域Aと地域Bを比べると、地域Aに工場が多く分布していることが分かります。
上記のわく組みにあてはめると以下のようになります。
地域Aには、工場が多く分布していることから、製造業などに従事する外国人の割合が高くなっ
ている。
(歴史・地理分野)日本からの移民に関する資料・グラフ読み取り問題。
(1) 合否を分けた一題で取り上げます。
(2) 複数の資料から読み取れることを選ぶ問題。
【資料1】からは、日本からの移民者が現地の会社などで、現地の人のために働いていたことが読み取れます。
【史料2】からは、日本からの移民者が現地に作られた日本の工場で働いていたことが読み取れます。
【史料3】からは、日本からの移民者が、開拓のみでなく義勇軍として武装していたことが読み取れます。
(3) 複数の資料を読み取り、理由を説明する記述問題。
設問の整理を行います。今回は、1952年以降移民を再開した理由を答える問題であることが分かります。
次に資料の整理を行います。
【表1】からは、各地から引揚をした人数が500万人にのぼることが分かります。
【写真1】からは、住宅などの不足から、引揚者が行き場を失っている様子がうかがえます。
【写真2】からは、子供たちをはじめ、食糧不足を訴えている様子が分かります。
以上の内容をまとめます。
(例)戦後、各地から引揚をした人が増加したことや、第一次ベビーブームによって人口が増加したことで、日本の食糧や住宅が不足したため。
(国際分野)イスラム教の文化や習慣に関する問題。
資料を読み取り説明する記述問題。
時間割を比べると、サウジアラビアの小学校ではコーランが授業の中に含まれていることが分かります。
献立からは、イスラム教で食べることが禁じられている豚肉を使った「とんかつ」が含まれている。
(政治・国際分野)子供の人権に関する問題。
(1) 発展途上国に水道施設を作ることによって、子供の権利を守る活動につながる理由を問う問題。
設問の条件に「家事労働における負担を踏まえて」とあるので、発展途上国の子どもたちが行う水道に関する家事労働について考えます。その2つのことに関連する事柄は、遠く離れた井戸や川などに水を汲みにいくことです。水をくむために1日何時間も歩いているため、教育を受ける時間が削られてしまっていると考えられます。
(2) 日本国内で働く外国人の現状についての問題。
日本で働く外国人には、選挙権が与えられていません。
(3) 裁判員制度創設から10年を迎えたことに関する問題。
裁判員制度ができた目的は、一般の人が裁判に参加することにより、裁判への関心を高め、理解や信頼を向上させることが目的の一つでした。
駒場東邦中の定番問題は、(複数の)資料を読み取り記述する問題・グラフの読み取りを正しく読み取れているかを問う問題・地図を比較する問題の3つです。これらは、日常学習で頻繫に触れるものではないため、類問演習や過去問を用いた対策が必要となります。
しかし、資料やグラフの裏側には、各分野の基礎知識が必要とされている問題も多くあることから、基礎的な知識に対する学習をおろそかにすることはできません。
9月になるまでに、各単元の基礎をしっかりと定着させることを念頭に置いて学習を進めてください。
今回取り上げた問題は、(複数の)資料を読み取り記述する問題です。
この問題で合否を分けるポイントは、設問の整理と解答の型を定めることと、正しい資料の読み取りです。
この2つのポイントを過去問演習の際に意識して進めることで、解答力が養成されていきます。
複数の資料を読み取り、理由を説明する記述問題。
今回問われているのは、ハワイが日本人の移民を受け入れた理由です。
また、設問中の条件に、「【史料1】【グラフ1】を読み取り」とあるので、これらの内容を読み取った上で記述に反映させます。
では、各資料を読み取ります。
【史料1】「『サトウキビの農場の経営者が困難を抱えている』…『…我々の抱える問題』」という
部分から、ある問題によってサトウキビ農場が経営難になっていることが読み取れます。
【グラフ1】1823年から1872年にかけて人口が減少し続けています。
(設問中の「明治の初めから1960年代ごろまで多くの…」という部分から)
日本が移民を開始し始めた1872年から人口は増加に転じて、その後増え続けています。
以上の内容をまとめて記述します。
(例) ハワイは人口減少に悩まされており、サトウキビ農場で働く人が不足していたから。