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国語の合否を分けた一題

雙葉中入試対策・国語の合否を分けた一題(2020年度)

A…雙葉中合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識や文脈力、論理的思考力で、得点に大きく差がつく問題
C…国語力がないと歯が立たない問題

難易度分類

問1 A 問2 B 問3 A 問4 A 問5 B 問6 B 問7 B 問8 A 問9 B 問10 B 問11 A 問12 B問13 C 問14 A 問15 B 問16 B 問17(1)A (2)C 問18 B
(1)A (2)B (3)A (4)B (5)A 
問1(1)A (2)A (3)A (4)B (5)B (6)A(7)B (8)A 問2(1)A (2)A

総評

今年度の雙葉中の問題構成は、大問1が論説的随筆文の読解、大問2が言葉の知識の問題、大問3が漢字の読み書き、というものでした。大問1の問題数が圧倒的に多いので、この部分の得点率が合否をわけることになったでしょう。解答は記述形式のものがほとんどなので、かなりの記述力が要求されます。また、一定程度の常識や社会問題への知識・関心が求められている部分もあり、一般的な中学受験の国語の問題とは、やや毛色を異にする部分もあります。中学受験の国語の王道は物語文の心情把握ですが、そういった問題が一切出題されていないのも特徴的です。ここ5年分の出題をチェックしても、物語文の出題はほとんどなく、随筆文の出題が多いです。近年の雙葉中の国語は、出題傾向といえるものがあまりなく、年度によって出題内容が違います。例えば、昨年度は詩(歌詞)の出題がありましたが、今年はありませんでした。また、今年度の大問2は言葉の知識の問題でしたが、こういった出題はここ5年では初めてです。共通していることとしては、大問3が漢字の読み書きであることと、前述したように随筆文の出題が多いことくらいです。過去問対策を行うときは注意した方がいいでしょう。昨年度と共通していることは、120字程度で自分の考えを記述させる問題があることです。これについては、来年度も出題があるかもしれないので、意識して練習しておいた方がいいかもしれません。学校からは合格者平均点などのデータ発表はないですが、合格者の平均得点率は5割から6割程度ではないかと推測されます。まずは6割確保を目標に、記述力の強化を図っていくのが、合格への近道だと思います。

問題別寸評

大問1.論説的随筆文

 武田邦彦『二つの環境 ~いのちは続いている~』より

問1

ことわざの知識を問う選択肢問題です。「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざの意味が分かっていれば簡単です。もし意味を知らなくても、文脈から類推して答えることも可能です。ここは確実に得点したいところです。

問2

筆者の考えの理由を問う記述問題です。素材文中に明確な理由が書かれていないので、難しい問題です。「冷蔵庫」という道具が、どういった役割をしているのか? その役割によって、赤ちゃんの命がどう救われているのか?と考えていくしかないです。純粋な意味での国語の問題とは少し変わっていて、常識や社会的な知識・関心が試されていると言えそうです。

問3

素材文の空欄補充をさせる抜き出し問題です。「~の生まれ変わり」となりますが、生まれ変わるためにはそもそも生きていなくてはいけない、つまり、生物が入らなくてはいけない、と考えられれば、素材文の文脈から「魚」しかないとわかります。

問4

比喩的な表現を具体的に説明させる記述問題です。「命の金メダル」という表現が何を指しているかですが、「命」が「長寿」や「平均寿命」、「金メダル」が「世界一」、ということを指しているのが素材文の文脈から明らかなので、比較的解きやすい問題です。

問5

筆者の考えを説明させる記述問題です。15字の制限があるので、傍線部の直前の内容をうまく抽象化してまとめる必要があります。「きれい」「衛生」「安心」といった言葉を手がかりにまとめていけば、半分以上の得点がもらえる内容になるでしょう。

問6

筆者の抽象的な表現を具体的に説明させる記述問題です。2題ありますが、前者は常識、後者は言葉の知識が問われています。「ニワトリの鳴き声が朝の訪れを告げるものであること」と「しっけい」という言葉の意味が「盗むこと」ということがわかっていれば大丈夫です。

問7

素材文の内容の具体例を問う選択肢問題です。『』でくくられた部分に書かれている内容と一致するものを探していけば、アとオが選べます。エの選択肢で少し迷うかもしれませんが、『』の中にこういった内容はありませんし、「野生に返す」という部分が不適切です。

問8

素材文の空欄を埋める選択肢問題です。この問題はとても簡単です。文脈からも、一般常識からも、答えは明らかです。こういった問題で確実に得点できるようにしておきたいです。

問9

言葉の知識を問う書き換え問題です。素材文の内容とはまったく関係がないので、純粋な言葉の知識が問われています。後半の「うれしがったり」が書けるかがポイントです。「うれしかったり」としてしまうと、正確な言い換えになっていないことに注意しましょう。

問10

慣用句の知識と文章理解を問う選択肢問題です。「手の中にある」という慣用句の意味が正しくわかっていれば、アとエはすぐに選択肢から外せます。イとウで迷いますが、素材文の文脈からは「所有」よりも「管理」の方が、より適切と考えられます。

問11

言葉の知識を問う空欄補充問題です。問9と同様、純粋な言葉の知識が問われています。「吹きすさぶ」という言葉を知っていて、さらにそれを連用形にすると「吹きすさび」になることがわかれば解答できます。比較的簡単な問題です。

問12

筆者の主張の根拠を問う記述問題です。一見すると書きにくそうな問題ですが、落ち着いて考えれば解答できます。「合否を分けた一題」で詳しく解説します。

問13

筆者の主張の根拠を問う記述問題です。問13とほぼ同様の問題ですが、こちらの方が少し書きにくいです。設問は「なぜ『孤独』なのか」ですので、まずは「孤独」の状況を具体的に記述し、そのうえで、「孤独」になってしまう理由を、傍線部を含む段落と次の段落の内容を参考にまとめていけば良いでしょう。

問14

筆者の主張の根拠を問う選択肢問題です。この問題は簡単です。素材文の内容を正しく読み取れているなら、イしか正解にならないことは一読してわかります。迷う選択肢はまったくないので、確実に得点したい問題です。

問15

素材文の内容を具体的に説明させる記述問題です。問16とセットになっているような問題で、問15が「利己的」「自己中心的」な内容で、問16が「利他的」「自己犠牲的」な内容であることを把握しましょう。ただし、ここに挙げたキーワードは素材文中にはまったく出てこないので、ある程度の語彙力が必要です。

問16

素材文の内容を具体的に説明させる記述問題です。前述のように、問16とセットになっている問題です。ただし、問15は「どういう行動」と問われているのに対し、問16は「なぜ」と問われていますので、それぞれの解答の文末に注意しましょう。

問17

比喩的な表現を具体的に説明させる記述問題です。(1)と(2)がありますが、(1)はほぼ抜き出し問題です。傍線部の2行前に「その声の主は」とあるので、その直後が答えになります。(2)はかなり書きにくい問題です。特に、傍線部の「最後」というのが、何がどう最後なのかを説明しないといけません。しかし、「最後」かどうかは筆者の主観であり、その根拠は素材文に明確に示されていないので、ある程度筆者の意図を汲んで記述する必要があります。小学生にはかなり難しい内容なので、模範解答のような記述が書けなくても、そこまで気にする必要はないと思います。

問18

素材文の内容を基に、自分の考えを述べさせる記述問題です。「現在の環境」「具体例を挙げて」とありますので、いま現在の世界の環境問題について、ある程度の知識が必要です。記述力とあわせ、世の中への興味・関心が問われているとも言えます。ここ2年、同様の出題が続いていますが、今後もこのような出題が続くかもしれないので、注意が必要です。

大問2.言葉の知識
問1~問5

言葉の正しい使い方を問う選択肢問題です。語彙力が問われていますが、比較的簡単な問題が並んでいますので、合格を狙うなら5題すべてを正解したいです。迷うとすれば、問2の「たじろぐ」と問4の「あいまって」でしょう。「たじろぐ」は「ひるむ・尻込みする」という意味ですが、これは人の様子ですので、エのような「足がたじろぐ」という使い方はしません。また、「あいまって」は「互いに影響し合って」という意味で、2つ(以上)の異なるものが影響し合う状況を指します。イのような「みんなの感動がしだいにあいまって」という使い方は、同じ「感動」に対して使っているので、これは誤用です。

大問3.漢字の読み書き
問1 漢字の書き  問2 漢字の読み

入試問題全体の難易度から考えれば、かなり簡単な漢字の問題です。ここもできればすべて正解を狙いたいです。「ぎそく(義足)」「ふうぶつし(風物詩)」「しぐさ(仕草)」の三つは、もしかしたらぱっと出てこなくて焦るかもしれません。それ以外については、一目で読み書きできないといけないレベルの問題です。

合否を分けた一題

大問1
問12

筆者の主張の根拠を問う記述問題です。雙葉中の問題は記述形式の解答が多いですが、その中でもかなりの記述量を求められているのが本問です。具体的な文字数指定がないですが、解答欄の大きさから100字程度の記述が求められていると考えるのが妥当です。一見すると書きにくそうな設問に見えますが、よく考えれば解答できます。以下に、考え方を解説します。

考え方

傍線部は「環境はそうはいかない」となっていて、そのように考える理由が問われています。
「そう」は指示語ですが、傍線部に指示語が含まれている場合は、まずはその指示語が指していることをはっきりさせないといけません。
傍線部の直前に「アメリカやヨーロッパに学べば良かった」とありますが、これが「そう」の指している内容です。
ですので、傍線部は次のように言い換えられます。

環境は「そう」はいかない
 ↓
環境は「アメリカやヨーロッパから学ぶわけに」はいかない

では、次に「なぜ環境はアメリカやヨーロッパから学ぶわけにはいかないのか?」と考えてみましょう。
これについては、傍線部の2行前に「世界でもめずらしい良い環境が与えられているのだから」とあります。
「~だから」とあるので、これは理由を示しています。
何の理由かと言うと、その直後にある「日本の環境は日本人が考えなければならない」ということの理由です。
こう考えると、先ほど書き換えた傍線部は、さらに次のように書き直すことができます。

環境は「アメリカやヨーロッパから学ぶわけに」はいかない
 ↓
世界でもめずらしい良い環境が与えられているのだから、
環境は「アメリカやヨーロッパから学ぶわけに」はいかず、
日本の環境は日本人が考えなければならない

すると、この設問のひとつの解答として、
「世界でもめずらしい良い環境が与えられているので、環境はアメリカやヨーロッパから学ぶわけにいかず、日本の環境は日本人が考えなければならないから。」
という内容が考えられます。
もしこの内容を解答したとしても、半分近い点数はもらえると思います。
まずは最低限、このような解答が書けることを目指しましょう。

しかし、逆に言えばこの内容では半分以上の点数は見込めません。
「世界でもめずらしい良い環境が与えられているので、環境はアメリカやヨーロッパから学ぶわけにいかず」というのは、少し説明不足ですし、厳密には論理的におかしいです。
特に「良い環境」かどうかは、この場合は無関係なので、単に「日本は世界でもめずらしい環境の国なので、環境の異なるアメリカやヨーロッパから学ぶことは難しい」というようにする方が論理的には正しいです。

解答例1: 世界でもめずらしい良い環境が与えられているので、環境はアメリカやヨーロッパから学ぶわけにいかず、日本の環境は日本人が考えなければならないから。
 ↓
解答例2: 日本は世界でもめずらしい環境の国なので、環境の異なるアメリカやヨーロッパから学ぶことは難しく、日本の環境は日本人が考えなければならないから。

もうひと頑張りしてみましょう。

さらなる改善としては2点考えられます。
まず1点目は、「世界でもめずらしい環境」という部分です。
何がどうめずらしいのか、もう少し具体的に書くことはできないでしょうか?
そして2点目は、「アメリカやヨーロッパから学ぶことは難しい」理由です。
「世界でもめずらしい環境」という理由だけで十分かどうか考えてみましょう。

1点目については、傍線部の段落直前の、5段落くらいに詳しく書かれています。
「日本だけが北半球の温帯の大きな島国」「温帯に浮かんでいる島だから気候は良い」「日本では昔から安心して水が飲める。そんな国は世界広しといってもめずらしい」などが使えそうです。
ただし、これをすべて書くのはさすがに文字数が多くなりすぎなので、少し抽象化してまとめてみましょう。
すると、「日本は立地条件や気候に関して世界でもめずらしい環境」という感じになります。

解答例2: 日本は世界でもめずらしい環境の国なので、環境の異なるアメリカやヨーロッパから学ぶことは難しく、日本の環境は日本人が考えなければならないから。
 ↓
解答例3:日本は立地条件や気候に関して世界でもめずらしい環境の国なので、環境の異なるアメリカやヨーロッパから学ぶことは難しく、日本の環境は日本人が考えなければならないから。

次に2点目です。
素材文の「アメリカやヨーロッパに学べば良かった」の直前は「生産の時代は生活の方法や技術まで」です。
これはどういう意味でしょう?
「生産の時代」というのは、日本で言えば明治以降の近代化の時代を指していると考えられます。
その時代はアメリカやヨーロッパが技術的には先進国で、日本も追いつけ追い越せでその技術や考え方を懸命に学ぼうとしていました。
しかし、環境についてはそうはいかない、と筆者は言っているのです。
なぜか?
それは、どのような環境で生きるべきかは答えのない問題ですし、また多くの国が環境問題でいまだに頭を悩ましていることを考えると、これについてはアメリカやヨーロッパも先進国とは言えないからです。
ただし、この部分については、歴史の知識や環境問題についての知識も必要なので、国語の力とは無関係の部分もあります。
あくまで、完璧を目指すなら、と考えて下さい。
あわせて、雙葉中は国語の問題を通して、こういったことへの興味・関心も見ようとしているのかな?と考えておくといいと思います。

解答例3:日本は立地条件や気候に関して世界でもめずらしい環境の国なので、環境の異なるアメリカやヨーロッパから学ぶことは難しく、日本の環境は日本人が考えなければならないから。
 ↓
解答例4:日本は立地条件や気候に関して世界でもめずらしい環境の国なので、環境の異なるアメリカやヨーロッパから学ぶことは難しいし、環境についてはアメリカやヨーロッパも先進国と言えるような状況ではないので、日本の環境は日本人が考えなければならないから。

ここまでくればあとは文字数調整です。
最後の解答例4は120字くらいになってしまっているので、もう少し言葉をまとめたり、言い回しを軽く変えたりしてみます。

解答例4:日本は立地条件や気候に関して世界でもめずらしい環境の国なので、環境の異なるアメリカやヨーロッパから学ぶことは難しいし、環境についてはアメリカやヨーロッパも先進国と言えるような状況ではないので、日本の環境は日本人が考えなければならないから。
 ↓
解答例5:日本は立地条件や気候に関して世界でもめずらしい環境の国なので、環境の異なる欧米から学ぶことは難しいし、環境については欧米も先進国と言える状況ではないので、日本の環境は日本人自身が考えなければならないから。

ほぼ100字程度になったので、これで完成とします。
この内容であれば、満点に近い点数がついておかしくないはずです。

雙葉中のように記述式の解答が多い学校の対策ついては、以上のように、記述を書いては練り書いては練り、といった練習がどうしても必要です。
実際には、入試本番の時間制限のある中で、ここまで書き直しをしながら考えることは難しいです。
ある程度はこういった作業を頭の中でやる必要があります。
そのためにも、自分の書いた記述をさらに良いものにブラッシュアップする練習を、いまのうちからたくさんしておいた方が良いです。
どのように考えて内容をブラッシュアップさせていけばいいかを、今回は解説してみましたので、ぜひ参考にしてみてください。
小学生には難しい部分もありますが、できるところからひとつひとつ練習していってください。

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