1 | 問1 A 問2 A 問3 A 問4 A 問5 A 問6 A 問7 A |
---|---|
2 | 問1 B 問2 B 問3 B 問4 B 問5 B 問6 C |
3 | 問1 B 問2 A 問3 A 問4 A 問5 A 問6 A 問7 B 問8 B 問9 B |
4 | 問1 A 問2 B 問3 B 問4 B 問5 A 問6 B 問7 B 問8 B |
A…開成中学合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えれば良しとする問題
2017年の問題を一言で表現するなら「昨年並みに易しかった」です。
開成学園が公表している平均点データを見ても、以下のように、70点満点の理科の平均点が、85点満点の算数や国語よりも高くなっています。「理科では合否が決まらない」という印象は拭えません。
【開成学園発表 2017年入試結果】 ※( )内は2016年度のデータ
また、以下のように、近年の理科の平均点だけを比べてみると、意図的に易化させていることが見て取れます。通常、前年の入試で大幅に平均点が上がった場合には、その反動で難化しすぎることが多いのですが、2015年度の超易問の後も、2年連続で易しい問題になっています。
その意味では、この傾向はしばらく続くのかもしれませんが、2013年度のように、急に難しくなることもありますので、油断せずに備えておきたいものです。(とは言っても、100点満点換算では合格者平均が78.7点、全体平均が70.1点ですから、他教科よりはずいぶん易しいですが……。)
【開成学園発表 最近8年間の理科入試結果】
さて、近年との比較をもう少し掘り下げてみましょう。
合格者平均は昨年よりわずかに上がっているのに、全体平均(受験者平均)はわずかに下がっています。「合否を分けた一題」で詳しく触れますが、これは、今年の方が若干合格者と不合格者の得点差が表れやすかったことを意味します。
この「差」に注目して近年の傾向を見てみると、比較的易しい問題でありつつも、2015年度に3.6点まで小さくなった合格者平均と全体平均(受験者平均)の差が、少しずつ以前の水準に近づいて行っていることが分かります。易しいとはいえ、きちんと得点すべき問題を得点していかないと、合格点には届かない仕組みになっていることがうかがえます。
「ガスが燃焼すると二酸化炭素と水(水蒸気)が発生する」という、受験生にとっては常識とも言える事柄を中心に、様々な化学基礎について聞いた問題です。前述の難易度分類でも全問「A」(開成中学合格を目指すなら、確実に得点したい問題)に分類した大問[1]ですから、ここでの失点は大打撃です。テスト開始直後で気負いやすい問題ですが、ミスのないよう、落ち着いて取り組みたいところです。
「空気中のある気体」は、当然酸素のことですから、酸素の性質を選んでください。
ガスバーナーの使い方ですから、これも基本問題です。
ねじの上下はもちろん、どちらに回転すると開くのかも覚えておいてください。
「石灰水をにごらせる」のですから、もちろん正解は二酸化炭素です。
一応漢字指定の問題ですが、これはきちんと書ける人が多かったのではないでしょうか。
面倒臭がって、普段の学習でCO2と省略して書いていた人は、もしかすると悩んでしまったかもしれません。
水溶液を加熱して水を蒸発させたとき、後に何も残らないのは、溶質(溶かしている物質)が気体か液体の場合です。正しく「すべて」を選ぶことができたでしょうか。
二酸化炭素を溶かした水溶液ですから、炭酸水の性質を答えればよい問題です。
無色無臭ですから、匂いはありません。また、弱酸性という性質ですから、BTB液は黄色に、ムラサキキャベツ駅はピンク色に変色させます。
なお、酸性と言ってもごく弱い酸であるため、炭酸はアルミニウムを溶かすことができません。
酸が金属を溶かすという性質で迷った人もいるかもしれませんが、もし炭酸がアルミニウムを溶かすのであれば、炭酸飲料はアルミ缶の容器には入れられないことになってしまいます。
選択肢は複雑そうに見えますが、よく読むと、基本的な消去法でも答えが見えるくらい易しい問題です。落ち着いて問題文を読むことができれば、難なく正解にたどりつけたはずです。
大問[2]は、「河岸段丘(かがんだんきゅう)」という地形の成り立ちを知っている人にとっては、きわめて易しい問題でした。
一応、知らない人でも解けるように、リード文には随所にヒントがちりばめられているのですが、やはり知っている人との差ははっきり出たはずです。
それほど難しいことではないので、開成を狙うレベルの受験生であれば、ぜひ覚えておきたいところです。
河岸段丘は、上から順に侵食されて深くなっていきます。つまり、この図1の河岸段丘の場合には、AとEが元々はつながっていたのですが、川による侵食を受けて、BからDまでがつながった溝ができます。その後、さらにCの部分だけが侵食を受けて、中央の溝ができています。
したがって、イ地点のれき層が堆積した時代(BからDまでがつながった溝だった時代)に川が流れていたのはB,C,Dとなります。
問1で説明した通り、河岸段丘は、元々ひとかたまりだった土地が、順に上から削られてできています。侵食される一方で、川を流れてきたれきが堆積して、その表面には「れき層」ができているのです。
表面に1mずつ堆積した「れき層」以外は、すべてがつながったひとかたまりの土地だったのですから、ボーリング調査で判明している層が、そのまま水平に堆積していると考えられます。
ここで問われている「侵食作用の仕組み」こそ、大問[2]全体を理解するための「根本原理」であると言えます。つまり、この問題がしっかりと理解できれば、少なくとも問1~問5は難なく正解できることになるでしょう。
平均点の高さを考えれば、この大問[2]での大量失点は、かなりの痛手となってしまいます。したがって、この問4を「合否を分けた一題」として、後で詳しく説明します。
蛇行した川では、外側の方が侵食作用が大きく、崖になりやすいということは、多くの人が理解している基本事項でしょう。では、bとeのどちらを答えるべきか……そのカギは、「流れの向き」にあります。
「合否を分けた一題」で後述する通り、海面との高低差が大きいほど侵食作用が大きいと考えられますから、同じ「蛇行の外側」であれば、より上流にあるbの方が侵食する力が強いと考えられるのです。
写真から観察できることを仮説とし、問題中に示された氷河の文章から、その仮説を説明できるかという手順で組み立てていきます。かなり高度な解答方法ですから、なかなかパーフェクトとはいかないかもしれませんが、なんとか食らいついて、部分点くらいは勝ち取りたいものです。
「生殖」(次の世代を残すこと)を軸とすることで、動物・植物の垣根を超えた大きなテーマの問題となりました。物事の本質を見る目を求める開成らしい切り口の問題と言えます。
ただし、それぞれの小問で問われていることは、きわめて常識的な知識事項であったり、問題文をよく読めばヒントが与えられている問題であったりと、比較的得点しやすいつくりになっています。
被子植物のめしべは、一般的に「柱頭(ちゅうとう)」・「花柱(かちゅう)」・「子房(しぼう)とその中の胚珠(はいしゅ)」の3部分からなっています。めばなのがくの下に見られる、やがてカボチャの実になる部分は、中に胚珠を持った子房の部分ですから、ここもめしべの一部であると考えられます。
また、受粉する部分は「柱頭(ちゅうとう)」と呼ばれ、花から花へと飛び移っている虫から、からだについた花粉を受け取る仕組みですから、これはaの部分となります。
受粉が終わると、花弁や柱頭は不要となり、枯れてしまいます。つまり、図3のアが示している部分が元々茎だったところで、カボチャの実が大きく、重くなったことで、花が咲いていた時とは向きが逆さまになっているのです。
メダカの産卵は基礎知識として覚えている人が多いでしょう。
付着毛と呼ばれる「長い毛」を使って、メダカは水草に卵を産み付けます。
ヒトなどの哺乳類では、子は母親の子宮で育つ間、必要な栄養分や酸素などを、「たいばん」と「へその緒」を通して母親からもらっています。また、不要になった老廃物や二酸化炭素も、やはり「へその緒」と「たいばん」を経由して母親に渡し、一緒に排出してもらっているのです。
ヒトが、母親から与えられた乳で数か月間成長することは、常識の範囲で知っていることと思います。
一方、メダカなどの魚類では、原則的に親は子の面倒を見ません。生まれて数日間分の栄養分はおなかにもって生れてきますが、その栄養分を使って少し成長したら、その後は自分でえさをとらなければ生きていけないのです。
図7のグラフでは、生まれる時点での体長を100%としていますので、受精卵の時点での大きさ(グラフ上では時間0のとき)の大きさが10%未満になっているA・Dが正解です。
A~Dがそれぞれどの生物にあたるかが分からなければ、問8も選びにくいでしょうから、問8と問9はほぼ同時に解く形になります。問7の前にある文章(リード文)が長いので、ついつい流し読みをしたくなりますが、この中に書かれていることが、この後の問題を解く上で重大なカギとなりますので、与えられた表1とともに、しっかり見ていくことが重要です。
まず、ダイズの実について、「ダイズの実は熟すにつれて乾燥し、一度大きくなった種子から水が抜けてやや小さくなります(図6)。」とあるので、図7のグラフのうち、途中で100%を超えているAがダイズであることがすぐにわかります。次に分かりやすいのはヒトで、受精卵の大きさがわずか0.1mmしかないのに、生まれる時点での平均的な体長は約30cm程度にもなるのですから、この数字で考えると3000倍もの大きさになっていることになります。つまり、Dのグラフがヒトということになるでしょう。
この時点でA・Dが決まってしまいますので、実はB・Cが分からなくても、問8・問9の解答には影響がありません。
やや面倒な計算もありますが、問題自体はそれほど難しくはありません。ただし、いかに計算を効率よく行えたかで、正解率や所要時間には差が出たかもしれません。
長さの数字をそのまま使うと積が大きくなってしまいますので、上手に比を利用して計算すると良いでしょう。
7.2cmが棒全体の長さの10分の1であることを考えれば、左側のおもりと右端にかかる力(おもりの重さ-浮力)の比が5:4であることはすぐに分かります。
ここで間違えると、大問[4]が全滅ということもあり得ます。落ち着いて、確実に解きましょう。
右端のおもりの位置が10cm左に動くということは、支点からの距離が26cmになるということですから、比を使っても面倒な計算になります。ミスなく、しっかり計算してください。
空気中にあるおもり1個が20g、水中にあるおもり1個が16gとなっているだけですから、左側は60g、右側は52gとなります。これさえ分かれば、それほど難しくはありません。
左端にかかる力が20g、右端にかかる力が16gとなりますから、72.0cmの棒を4:5に比例配分すれば良いことになります。ただし、ひもの位置を何cm動かすかという問題なので、あえて8:10に比例配分してしまった方が簡単でしょう。
棒の重さを無視できる状況であれば、左端にかかる力の大きさと右端にかかる力の大きさの比が等しければ、つりあうひもの位置も変わりません。したがって、ウの「動かさない」が正解です。
棒の重さを考える問題では、重心(この問題では中央のO点)に架空のおもりを考え、その重さが棒の重さにあたると考えます。問6を間違えると、次の問7も自動的に間違えることになってしまいますので、慎重に解いてください。
ひもの位置を基準(支点)とすると、すべての「支点からの距離」が定まらなくなってしまいますので、O点を基準(支点)として、ひもにかかる力もつりあいの要素の一つと考えるようにしましょう。この場合、上下の力のつりあいから、ひもを引く力の大きさは96gとなります。
問5との違いに気づかせたい問題です。左右にかかる力の大きさの比が等しくても、棒の重さが変化するわけではないので、ひもをつるす位置は変わっていきます。また、左右につるしたおもりに対する棒の重さの割合も変化していくため、ひもの位置のずれ方は等間隔にはなりません。
極端に難しい問題はありませんでしたので、今年の入試問題に関しても、「ミスの少ない人が有利」という傾向は続きました。
大問は、物理・化学・生物・地学の4分野から1題ずつ計4題、小問は30題で、これも例年通りです。解答形式は、記述1題、作図1題、数値6題、語句1題の他はすべて記号選択でした。
さて、一つ間違えると連鎖的に間違えてしまう危険性のある問題も何問かありましたが、根本的な河岸段丘の出来方が理解できていなければ大問[2]全体で大量失点をする可能性があることから、大問[2]の問4を、「合否を分けた一題」として取り上げます。
【問題】大問[2] 問4
問4の問題文中に、「川底の高さと海面の高さの差が小さくなるため川の流れが遅くなり、侵食作用は弱まります。」という文章があります。これが、河岸段丘の仕組みを理解するための、とても重要なヒントでした。
以下に、河岸段丘の作られ方をまとめてみます。
<河岸段丘の作られ方>
①川の流れが蛇行することで、広い範囲の地面が削られると同時に、表面には流れてきたれきなどが堆積します。
②土地が隆起する(または、海面が下がる)ことによって、川底の高さと海面の高さの差が大きくなり、川の流れが速くなることで侵食作用が強まります。
③川底がさらに削られ、もう一段階深い溝ができます。
つまり、「エ」が正解です。
この基本が分かっていれば、問1~3も難なく正解できることになります。知らなかった人は、この機会にぜひ覚えておいてください。