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社会の合否を分けた一題

開成中入試対策・社会の合否を分けた一題(2020年度)

難易度分類

問1 A 問2(1)A (2)A 問3(1)A(2)B 問4(1)A(2)A(3)A 問5A 問6(1)B 問7(1)A(2)B 問7(1)A(2)A(3)A
問1 A 問2A 問3A 問4A 問5 A 問6 A 問7A 問8A問9 A問10 A 問11 A 問12 A 問13 A 問14 A 問15 A 問16 A 問17A 問18A 問19 A 問20A 問21A 問22A 問23A 問24A問25B 問26A問27A
問1A 問2(1)A(2)A 問3(1)A (2)B 問4B 問5 B問6 B問7(1)A (2)B

A…開成中合格を目指すなら、確実に得点したい問題
B…知識、解法次第で、得点に大きく差がつく問題
C…難易度、処理量から判断して、部分点を拾えればよしとする問題

出題総評

2020年度の開成中は、例年よりも基礎知識を問う問題が増加しました。
さらに、近年増加傾向にあった公民政治分野の出題量が大幅に増加しています。
しかしながら、難易度は高くありませんでした。基礎を基本として、数字や分数に関連する知識が定着していれば正解できる問題がほとんどでした。開成レベルの受験者層から考えると、決して大きな得点の差がつかない試験だったと言えます。

歴史分野についても公民分野と同様に、例年よりも易化しています。開成中の定番問題の一つである「江戸問題」は、今年度の出題が見られませんでした。これが易化した要因の一つと言えます。設問での聞かれ方が複雑な部分もありますが、設問やリード文を活用することで解答できる問題がほとんどでした。

地理分野では、「東京問題」が出題され、資料や図を基に答える問題が中心でした。
また、気候に関する問題や昨年度に引き続き、地図を基に考える問題が出題されていました。
公民・歴史分野に比べると難易度は例年通りです。

開成中ホームページの中学での社会科授業の特色にあるように、『単なる知識の詰め込みや暗記に終わらない』『調査・発表形式の授業、地図や統計資料を使った手作業』『開成の周辺をフィールドとして調査、発表を行う地域学習』といった学習の基本姿勢が問われる問題が出題されている印象でした。

資料・表・地図・グラフについての読み取りだけではなく、背景にある事柄や因果関係を考えることが求めています。したがって、普段の学習の中でも問題演習のみでなく、資料集や地図帳なども用いて背景や因果関係を考えるといった学習を心掛けるようにしましょう。
問題構成は、3分野から大問3題、小問54問。
解答形式は、用語・語句形式が16問、記号選択が30問、地図記入の作図問題が2問、記述が2問で、計算問題が1問。記述は、1~2行程度で、取り組みやすくなっています。
小問が54問と非常に多いため時間配分への注意や解答速度を鍛えることが必須となります。
計算が必要な問題は、開成受験生にとっては比較的易しく、記号選択問題は、設問・選択肢中のキーワードをおさえることができれば解答しやすい問題ばかりです。一方で、年号や場所の並べ替え問題が2問出題されており、対策次第で差がつく問題でした。作図は2問とも易しく得点すべき問題と言えます。

大問1

(公民分野)2019年の公民時事をテーマとした政治分野についての問題です。
近年増加傾向にあった公民政治分野ですが、今年度はさらに出題量が増加しました。リード文では消費増税や参議院選挙などについて取り上げられていましたが、問題の大半は関連する単元からの出題でした。難しい時事用語や複雑な仕組みの理解を伴う問題の出題はなく、基礎知識を正確に定着させることができれば得点できる問題ばかりです。東京問題や発展的な知識の習得に没頭するあまり、基礎知識の定着をおろそかにしてしまうことは禁物です。
特に今回の出題で多かった「公民の数字・分数」に関連する問題は、基礎知識の定着度を問う典型的な問題と言えるでしょう。

問1

2019年10月より10%に増税した消費税に関する問題です。
「軽減税率」はニュースで大きく取り上げられ、みなさんの生活にも関わることから易しい問題といえます。時事テキストでも多く取り上げられていたため、多くの受験生が知っている言葉だったのはないでしょうか。

問2

(1)社会保障制度に関する問題です。
社会保障制度は、日本国憲法第25条の生存権を保障するための制度です。少子高齢化の今、今後の入試においてもグラフ・図や記述問題といった多様な出題形式が予想されます。少子高齢社会と社会保障制度の関連をおさえておきましょう。
(2)年金は社会保障制度の「4つの柱」のどの部分に該当するかを問う問題です。
4つの柱となる、公衆衛生、社会保険、社会福祉、公的扶助のうち、老齢年金は年金保険であるため、社会保険の中に含まれます。

問3

(1) 衆議院の優越に関する問題です。
数字・分数に関連する問題の中でも、憲法や内閣不信任などに比べて、あいまいになりやすい部分のため、差がついたと言えます。今回は「予算の議決」における衆議院の優越を問う問題でした。参議院が衆議院の議決を受け取った後30日以内に議決しない場合、もしくは衆参で異なった議決をしたのちの両院協議会で不一致の場合は衆議院の議決をそのまま国会の議決とします。この他、衆議院の優越があるものは「法律案の議決」、「条約の承認」、「内閣総理大臣の指名」です。
(2)国連分担金に関する問題です。
2016年までは日本の国連分担金の分担率は世界2位でしたが、現在は中国の分担率が増加しアメリカについで2番目の分担率となったため、日本は3位の分担率となりました。

問4

(1)内閣が「国会に対して連帯して責任を負う」仕組みを議院内閣制といいます。
(2)内閣不信任決議が議決された後の動きに関する問題です。
内閣不信任決議が可決した場合は10日以内に解散か総辞職を選択することになります。また、解散後40日以内に総選挙が実施され、選挙の日から30日以内に開かれる国会を特別国会といいます。特別国会の議題は内閣総理大臣の指名です。
(3)内閣総理大臣は国会議員の中から国会で指名されます。

問5

三権分立の仕組みに関する問題です。
三権分立の図を頭の中ではっきりとイメージできるようにしておくことがポイントです。
内閣から裁判所に対しては、最高裁判所長官の指名とその他裁判官の任命を行います。

問6

(1)選挙の仕組み関する問題です。
2019年に実施された参議院議員通常選挙に関連して、被選挙権・選出方式・新たに導入された制度について問う問題でした。時事テキストの中でも取り上げられている割合が高かったため、正答率は高い傾向にありました。
(2) 一票の格差に関する資料読み取り問題です。
2016年と2019年の議員一人当たりの有権者数の上位・下位3県について書かれた資料を読み取る問題でした。開成中をはじめとして多くの学校で同様の資料や表を用いた問題が多くなっています。
一票の格差とは、議員一人当たりの有権者数の差によって有権者の持つ1票の価値が異なる問題です。
憲法14条に規定されている平等権の法の下の平等に反するものです。地方に比べて都市部は人口が多く分布しているため、都市部の1票の価値が地方に比べて低くなってしまいます。

問7

(1) 日本国憲法と大日本帝国憲法を判別する問題です。
大日本帝国憲法の主要な条文をおさえておくことが望ましいですが、わからない場合でも条文中の言葉を手がかかりにすることで、判別することが可能な問題でした。「臣民」という言葉に注目しましょう。
(2) 憲法改正の流れに関する問題です。
憲法改正の手順は公民分野の定番問題の一つです。数字や分数を含む問題ですが、多くの受験生が定着させているため、差がつかなかったといえます。
(3) 憲法の条文の穴埋め問題です。
41条、98条は定番問題です。その他にも、前文、1~3条、9条、14条、25条、65条、96条は確実におさえましょう。

大問2

(歴史)日本の歴史についての問題です。
開成中の歴史と言えば「江戸問題」。今年度はその出題がなく、そのため全体の難易度が易化したといえます。解答に必要な知識は標準的なものです。選択肢では、一部難しい知識や用語も出されていますが、全てを知っていなくてもこれまで学習した知識を活用することで十分に解答できる問題です。

問1

古代の日本について記された中国の歴史書に関する問題です。
「霊的な力を発揮して約30あまりの国を従えていた」というのは『魏志』倭人伝の内容です。

問2

蘇我氏によって建立されたのは飛鳥寺です。法隆寺は聖徳太子、東大寺は聖武天皇、興福寺は天智天皇が建立を命じた寺です。

問3

中大兄皇子は天智天皇として即位しました。

問4

平城京は碁盤の目状に区切られ、朝廷の役所から朱雀大路が伸びています。

問5

遣唐使としてふさわしくない人物は、行基と菅原道真です。

問6

元寇軍は「てつはう」と呼ばれる火薬を用いた武器を使用していました。

問7

豊臣秀吉は、小田原攻めによって全国を統一しました。その後、徳川家康の領地を関東に移しました。

問8

朝鮮出兵の際に連れてこられた陶工により、有田焼や薩摩焼が作られました。

問9

鎖国政策が行われたのは、3代将軍徳川家光の頃です。

問10

民衆が豪商などの家屋を破壊する行為を打ちこわしといいます。

問11

水戸・紀伊・尾張藩を親藩といい、御三家と呼ばれていました。

問12

天保のききんによって大阪で反乱を起こしたのは元幕府の役人であった大塩平八郎です。

問13

ペリーが浦賀に来航したのは1853年です。その翌年に日米和親条約、1858年に日米修好通商条約を締結しました。

問14

日米修好通商条約などの安政の五か国条約によって日本には関税自主権がありませんでした。
また、貿易に伴い外国人には居留地が設けられてその範囲内での活動を認められました。

問15

尊王攘夷運動の中心となったのは薩摩藩と長州藩です。

問16

リード文中の「会議を開いてみんなの意見を聞いて国の政治を行っていく」といった部分などから、五箇条の御誓文であるとわかります。

問17

岩倉使節団には、津田梅子が同伴しており、後に女子教育に貢献しました。

問18

1872年に太陽暦が導入されました。そのほか、この年には学制、新橋~横浜間での鉄道開通、富岡製糸場開業など多くの出来事があります。

問19

下関条約によって得た賠償金によって、八幡製鉄所が建設されました。

問20

日露戦争時に「君死にたまふことなかれ」という詩を発表したのは与謝野晶子です。

問21

ポーツマス条約はアメリカの都市ポーツマスで結ばれました。

問22

日英同盟を口実に日本は、中華民国に対して二十一か条の要求を出しました。

問23

第一次世界大戦後には、中国で排日運動の五・四運動、朝鮮では三・一独立運動が起こりました。

問24

普通選挙法は、加藤高明内閣によって制定されました。

問25

昭和前期の並べ替え問題。Bの国際連盟からの脱退は1933年。Aの二・二六事件は1936年。Cのアメリカによる石油の禁輸は1941年の出来事です。

問26

日本はポツダム宣言受託によって、敗戦を認めました。

問27

日本の国際連合加盟は1956年の日ソ共同宣言がきっかけです。

大問3

(地理)水に関する地理の総合問題です。
今回の地理分野では、開成中で頻出の「荒川」・「江戸川」に関連する問題が見られました。地理や歴史などのどの角度から聞かれても答えることができるように、関連付けておく必要があります。
また、記述問題も例年通り出題されており、今年度は定番の理由記述が出題されました。1~2行の記述練習を日々の学習で意識していく必要があります。

問1

陸水量に関連する問題です。
陸水量はあまり馴染みのない言葉だと考えられますが、設問中の言葉を手がかりに意味を考えると解くためのヒントを導くことができます。「地球上に存在する水のうち、97.4%は海水で、陸にある水(陸水)は2.6%にすぎません。」という部分と〈表1〉の割合を基準に考えます。選択肢をみると、氷河、湖水・河川水、地下水となっています。それらの水の量イメージを考えてみましょう。氷河は南極大陸の上にある氷くらいの量なのでかなり多くあると予想できます。また、地下水は普段見る機会はないものの、大量の水が地下に張り巡らされていると考えると、氷河に次ぐ割合だと推測できます。

問2

(1) 全国の水使用量に関する問題です。
1975年から2015年にかけて増加しているDは生活用水、減少しているEは工業用水、Fは農業用水です。
(2)工業用水の使用量が減少している理由は、水の再利用率が高くなったためです。

問3

(1) 東京・金沢・長野・尾鷲の位置を白地図に記入する問題です。
(2) (1)の年間降水量を、多い順に並べ替える問題です。
4つの都市は雨温図として取り上げられやすい典型的な都市です。林業などで栄えた尾鷲市は7~9月の降水量が4つの中で最も多い都市です。ついで、冬の降水量が多い金沢、太平洋側の気候である東京、内陸部の中央高地の気候である長野の順に続きます。

問4

ハザードマップに関連した問題です。
江戸川区の多くは海抜ゼロメートル地帯となっており、水害の影響を受けやすくなっています。

問5

地図を読み取り、作図する問題です。
地図への作図は新しい問題です。普段の学習でも行うことがない形式の問題であるため、一見すると難問に見えるかもしれません。しかし、設問を読み解くと、地図中から「標高差」を読み取れば解くことができる問題であると分かります。この部分に気が付くことができたかどうかが正解への分かれ道となりました。地図に向かって西から東へと流れていることが、等高線の標高から読み取ることができます。したがって、┃がついている部分の高さと同じ高さのところにを書き入れましょう。

問6

1人あたりの水使用量に関する問題です。
1㎥が1000ℓということをおさえて、計算式を立てると以下の通りになります。

問7

合否を分けた一題で取り上げます。

合否を分けた1題

開成中では、例年1~2行程度の記述問題が出題されています。
今年はやや記述量が増えています。今後もこの出題傾向は続き、文字数の増加も予想されます。
社会科用語に対する説明記述での出題であれば、記述する際に困ることは少ないですが、開成記述は理由記述が中心で、通常の塾用テキストには直接的に書かれていない事柄に関する理由記述が出題される傾向にあります。では、どのようにして初見の理由記述の解答力を身につけるのか。
そのポイントは、日常学習において理由記述を取り入れることと、学習の中で因果関係や背景を考えることにあります。毎日1日2~3分程度の記述練習や、授業中に先生が解説した出来事の理由や背景に関する説明を書き入れるといった方法を意識できると力として定着していきます。

大問3
問7(2)

今回の記述は、資料読み取り型の理由記述です。
2020年中学入試では、多くの学校でこの資料読み取り型の記述の出題量が増加しました。

資料が与えられている場合、まずはその資料からわかることを整理します。
今回は、下水排除の2つの方式の説明と流れについて読み取ることができます。

そして、次のステップが合否を分ける重要なポイント。
そのステップとは、設問から解答の方向性を定めることです。
今回の問題の解答の方向性は以下の通りです。

≪表2から読み取れること≫ 
+ 
処理しきれない排水が生まれてしまうという欠点を持った合流式の下水道が整備された理由

上記の方向性にあてはめて、次のようにまとめると良いでしょう。

解答例
千葉県などに比べて人口が集中する東京都では、下水道の整備が急務となり、雨水と汚水を同時に処理でき設置が簡単な合流式の下水道の設置が進められたから。

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