今年の入試も、手際よく、確実に、出題意図を読み取りながら処理していく力が試されました。難問は少なく、失点は許されません。出題のされ方がどうであろうと、迅速・的確に知識を思い起こして、とにかく確実に正解していく、という処理能力をどこまで高めていたか、が問われたと言えます。
このことは、平成25年度中学入試結果(2013.2.1実施)からもわかります。
社会の合格者平均点は、70点満点中61.3点でした。9割近い得点率が求められたのです。算数・理科の合格者平均点は8割程度、これも高いですが、社会は平成22年以来の高さです。前年の平均点が高いと次年度の問題は難化し、前年の平均点が低いと次年度の問題は易化するという原則通りではありますが、出題者も難易度の設定に苦労していると思われます。来年度は、難化することが当然予測されます。
合格者平均と全体平均の差を見ると、国語8.3点、算数14.7点、理科6.0点、社会3.6点と社会が一番接近しています。およそ小問1つ分の得点がとれたかどうかが合否を分けたのです。この厳しさを乗り越えられるかどうかで、開成中学に合格できるかどうかが決まるのです。これほど隙のない仕上がりが求められる中学校は他にはないと言えます。
設問については、ストレートに知識だけでは解けないように、工夫された問題の出題も見られましたが、標準的な知識を問うものが大半でした。差がつく問題は限られており、落とせる問題も1~2問程度です。
2013年度入試で、合否を分けた問題として1題を挙げるとすれば、
2の問3です。地理の集合リード文に続く小問集合ですが、問3では、推論力と正確な知識の求められる度合いが若干高くなっています。
① は、日本の経緯度と世界の国々の位置関係を問うものです。確実な知識から論理的に正解にしぼりこんでいく力が求められます。
④では、「火砕流」と「土石流」の知識が問われました。
⑥のⅲでは、「治水」という用語の知識が問われました。
⑨のⅰでは、10字以内で記述することが求められました。
また、⑨のⅱは、「部品」と「組立」ということばを空所に補充する問題でした。
いずれも、後から考えれば、難問とまでは言えませんが、予想して対策しておくことが当然できるというような種類の問題とも言えません。④は難しい用語と言えますが、大きな災害については、起こったことを具体的に専門用語とともに理解しておくことが求められていると考えられます。④は、⑥のⅲは、差がつく問題です。その他の問題も、もやもやした部分が残りながら解いていくお子さんが多かったようです。用語チェックとしては「ゆるめのことば」(覚えるべき言葉として意識されにくいもの)が出題される傾向は、難関校でときおり見られます。
まず、固有名詞やそれに近い具体的な名前だけでなく、一般的な説明用語もはっきり意識して学習していく必要があります。お子さんは、一般的・抽象的な用語の理解度をあげていくという意識はあまりないことが通例です。具体的な例だけでなく、抽象的な用語・概念についても、具体例と対比させながら確実に習得していく意識づけを、早い段階からしておくことが望ましいのです。反応すべきポイントを見逃したり見落としたりしないよう、日頃から注意深く「ことば」に反応できるようにしていきたいところです。
知識の階層的整理をすること、たとえば、災害、災害の種類、具体的な例、起こったこと、被害の内容、予防策・対策などと結びつけながら整理するような学習習慣があれば、知識の漏れや抜けも少なくすることができます。